蝶よ花よ、あこがれに恋して
だから、あの日の私は、思いがけず、真実を知ることになったのだ。
──「あっ、!」
テーブルに今晩の料理を配膳をするとうっかり落ちてしまったテレビのリモコンは、その拍子にチャンネルが切り替わった。
『ナイスアシスト!目が覚めるような鋭いパスでしたね』
流行りの軽快なメロディを流していた音楽番組はBS放送に変わり、興奮状態の実況が流れるのを、リモコンを拾いながら聞いた。
『受け取った相沢はそのまま……いや、桜庭に戻して桜庭シューーーーーーート!!!!』
『あはは!完全にディフェンスの裏を付いて決めましたねえ』
『今のはディフェンス、相沢の好戦的なプレイにまんまと引っかかったように見えましたね』
『そうですね。桜庭も相沢の性格を見越して上手く利用しましたね!いやあ今年の日本代表は良いですね〜!楽しみな選手が多い』
桜庭、という単語に私の耳はとても正直で、視線はテレビへと移した。
───「…………え?」
空いた口が塞がらないまま、テレビの中の彼と視線が重なる。
何度も想像した。
眠る直前、仕事中。いつだって私はその時を脳裏に描いていた。
桜庭さんはどんな衣装でステージに立ち、何色のスポットライトを浴びて歌うのだろうと。
そこには、流れる動作で、いつか練習した指ハートを作る桜庭さんが映し出されていた。
「(さ、サッカー選手、だったの……!?)」
『ああ、桜庭志邑の“鈴ハート”。近頃の桜庭はサービス精神が旺盛で、女性ファンはたまりませんねえ』
『彼らはサッカー界のアイドルですからね』
アイドルはアイドルでも、桜庭さんは、サッカー選手、らしい。