蝶よ花よ、あこがれに恋して

桜庭さんは、サッカー選手




桜庭さんはアイドルじゃなくて、サッカー選手だった。


「……胡桃沢さん、どうしたの?」

この衝撃に私は五日ほど引き摺られており、ぼうっとし過ぎている。今日はキッチン担当なのだけど、おにぎりをまるく握ってサッカー柄にしてしまっているのだ。本来ならば、さんかくのおにぎりに具材を落とすだけでいいものを、私は。

「……あっ、ご、ごめんなさい……またやっちゃった」
「昨日も気づいたらサッカーボール量産してたよね。どうしたの急に。サッカーにハマった?」

しゅんとちいさくなる私を横目に、白瀬さんはサッカーボールをまかない用のタッパーにいれてくれた。

「……!そ、そういうわけじゃなくて……」
「じゃあ、好きな人がサッカー好き?」
「それは……」

何も言えずに口ごもった。

桜庭さんはサッカー好き、じゃなくてサッカーを仕事とする人だ。

プロのサッカー選手は体が資本。食事にはことさら気をつけなければならないのに、私は、栄養ではなく美味しさや盛り付けばかりに気を取られて、全然考えてなかった……!


ばかばかばか!!心鈴のばか!!!


「白瀬さん、私をグレッチで殴ってください……」
「突然の丸の内!?どうしたのよ〜」

あれから私は自分の不甲斐なさに何度も苛まれている。
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