蝶よ花よ、あこがれに恋して
桜庭さんは、身体の拘束は解いても身体の一部を掴んだままだった。今は手。しかも恋人繋ぎという荒業。早く離れてもらわないと私の心臓が止まってしまうので気持ち的に早歩きで階段を駆けたのだけど、桜庭さんがゆっくりなのであまり意味は成さない。
「あの、桜庭さんの試合、100回は見ました」
「それは見過ぎ」
「ファンクラブの、プラチナ会員にもなりました」
「心鈴ちゃん、保険屋に言われるがまま契約しそうだよね」
「え!?必要なものだけ加入してますよ」
「どうだか」
だからなんとか会話を続けていたけれど、桜庭さんの笑顔も横顔も、彼の空気感も私はやっぱりたまらなくて、別の熱が頬に通って会話の中身はしゅるしゅると消えてしまう。
少し会わなかったせいで、耐性が落ちた私の視力に、生身の桜庭さんはちょっとかなり刺激がつよい。
私の家にたどり着くと、私から先に玄関のドアが閉まるより先に、後ろから抱きしめられた。
供給過多だ。
「ねえ、やくそく、覚えてるよね」
今日の桜庭さんは、なぜ甘い。