蝶よ花よ、あこがれに恋して
そのまま二人で関係者席に移動した。Tokiさんは誰かと連絡しているのかたまにスマホを触っていた。

行き場が分からないので「合ってるんですか?」と言えば「多分」とTokiさんは言った。不安だ。けれども青々とした芝生が目に飛び込んで来ると、どうしたって高揚した。

たどり着いたのはスタンドではなく、選手たちのベンチにほど近い場所だった。

遠くだけど同じ位置にカメラマンやリポーターと見受けられる人もいる。完全に部外者じゃないのかと、おどおどして「こんなところで見てもいいんですか?」と言えば「あとで上にある席に移動すればいいんじゃね」と、Tokiさんは言った。ここで見るわけじゃないらしい。

桜庭さんはどこだろ……。

キョロキョロと見渡した。ピッチの上では選手たちがストレッチをしたり軽くアップをしているのが見える。どうやら練習中らしい。練習中とはいえ、スタンドの席にはサポーターが入っており、試合まで時間があるのに随分熱心なんだなあと、初経験な私は人並みな感想を抱く。

「ご近所さん」
「へ?」
「これ、被ってな」

雑に言うとTokiさんは自分が被ったキャップを私に深く被せた。丁寧に。Tokiさんの手首に巻きついたブレスレットがじゃらっと綺麗な音を鳴らすのを聞いた。

私にキャップを渡した彼は、パーカーのフードを被り、持参していたのだろうサングラスを掛けた。

て、え?顔ちっさすぎない?何事?サングラスが大きいの?そういうこと??

骨格が大優勝してるんだけど、一体何頭身?体の作りがもはや別次元だし、もう、アイドルが怖い。
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