蝶よ花よ、あこがれに恋して
さくらばさん、は、ゆるく微笑んで人差し指で内緒を形作る。

「ごめんね。いまの、内緒ね」

推しのあざとさ、尊いが無限大……!

笑顔が尊くて、眩しさで溶けそうだ。

どこへ向けた秘密なのか分からないけれど『今見た一部始終はトップシークレット!』と、私の中の私が末端神経まで伝達する。

「向かいに住んでる子だよね」

「えっ……!!」

しかも、認知されてた……!?

私の脳内が爆発寸前で、それでもこくこくと何度も頷いた。私の内側なんて知る由もない桜庭さんは、余裕のある微笑みをやめない。


「えー……と、お向かいさんは、名前なんて言うの?」


聞き間違いでしょうか。
今、名前を聞かれてる?

「こ……心鈴ですっ!!」

うあ……苗字にすればよかった……!

言った瞬間、後悔に苛まれた。



「心鈴ちゃん」


ダメだ、沼る。その危険性を自覚する。

その右肩上がりの語尾とつけられた「ちゃん」、さらには絶妙な甘ったるい笑顔。その笑顔で一体何人の女の子を虜にしてきたのだろうと、彼の罪深さを目の当たりにする。
< 6 / 137 >

この作品をシェア

pagetop