蝶よ花よ、あこがれに恋して
気づけば私の目から自然と涙があふれていた。
「……試合開始直後だけど大丈夫?」
「はい。ちょっと、感動しただけです」
「バスタオル準備した方が良かったんじゃない」
「そうですね、持参したハンカチだけじゃ間に合わないかもです」
Tokiさんは「変なの」と笑うけれど、私はお構い無しに試合開始中、何度も涙したし、何度も声をあげた。
「ああっ!!桜庭さんにぶつかった今の相手選手、明日の晩御飯で苦手なメニューばかり出て欲しいです!!」
「そんなんでいいんだ」
「桜庭さんに怪我をさせたらちょっと重くなります」
「楽しそうだね」
「楽しいです!……あっ、……」
サッカーは比較的ゆっくり視聴出来るとはいえ一瞬の隙にチャンスが生まれるので目が離せない。
「桜庭さんっ!」
桜庭さんがシュートと見せかけてマークの空いた選手にパスを回し、そこから目にも止まらぬ速さでゴールへと切り込む。瞬きさえも許されないプロの世界を実際の肌で感じとり、鳥肌が立つのを実感した。
「わ、すごい!でもいまの、桜庭さんのナイスアシストから生まれたシュートですよね!」
「そうだね。まあ、サクも少しは関わったんじゃないの」
「さすが桜庭さんです」
桜庭さんはゴールを決めた選手へスキンシップをしている。それを見れば私も嬉しくなるのは必然で、勝手に頬が緩む。