蝶よ花よ、あこがれに恋して
「あんたはあれだね。何でもない日も特別な日に変えてくれそうだ」
一人で勝手に騒ぐ私を見て、Tokiさんは頬杖をついて微笑んだ。ほっそりとした長い指となんとなく色気のある手首の骨。華奢なブレスレットがアンバランスで目に毒なので、「……そうでしょうか、」と吐き捨てて、すぐに目を逸らした。
「あいつにとって貴重な存在だよ」
「本当ですか?」
「サク、基本的に無関心な男だから」
「(無関心)」
確かに、初めて関わったあの夜、桜庭さんは女性に対して冷めた対応をしていた。仮にも恋人に対して、ぞんざいな扱いだったと思う。
──……ということは。
もしもこの先、私と桜庭さんの関係に名前が変化することがあれば、桜庭さんはあんな風に、冷たくなってしまう……?
邪な考えが過ぎるけれど、すぐに消えた。だって、それ以上に私は桜庭さんの色んな表情を見てきた。もし冷たくするなら最初から冷たい人だ。私が避けたら自分から消える人だ。私を許さないはずだ。あんなにも気の抜けた笑顔を見せない人だ。
そもそも私は恋愛対象外。だからきっと、うまく関われている。
「俺も気になるな、きみのこと」
Tokiさんの声で考えが止まる。
「えっと、」
気になる言葉だった。アイドルの言葉は果たして鵜呑みにしても良いものか。