蝶よ花よ、あこがれに恋して
気になる、というのは桜庭さんを介入して、ということだよね?
そういうこと……だよね?
しかし、もしも別の意味合いが含まれているのならば、今すぐに私はTokiさんと距離を置く必要がある。
「か、確認ですが……くど、口説いてません……よね?」
伺うように上目で見上げた。Tokiさんは私が勇気を振り絞って口にした疑問を鼻で笑う。
「俺がご近所さんを口説くような男なら、サクは同じ日にチケットを取らないよ」
「ですよねえ、自惚れました」
ああ良かったと胸をなでおろす。
「安心しなよ。あんたちゃんと可愛いよ」
ふと、気を抜いた瞬間に褒められてしまい、耳が赤くなるのを自覚した。
元来、アイドルとはこういう人達だ。不意打ちで下々の民を恋惑わす職業であるはずだ。
ごめんなさい、桜庭さん。本物のアイドル、舐めてました。
「本物のアイドル怖いです……」
「は?偽物に騙されたの?」
「いえ、偽物というか、勘違いというか」
「なにそれ」
しかも墓穴を掘るという失態まで侵した私は、「桜庭さんが……」と、白状すれば、Tokiさんに大いに笑われる未来が待つのは明白だった。