蝶よ花よ、あこがれに恋して

だめだ、今日の桜庭さんはちょっと、いやかなり心臓にわるい気がする。こういう時、どう反応しても顔が赤くなる未来は見えている。

「そ、そういえば、どこに向かっているんですか?こっち、家の方向じゃないですよね」

だから一旦逃げようと、車窓からの景色へと視線を移した。

「飯行こ。腹減った」

ご飯、と言われると思い出したようにお腹が空いた。

「賛成です。あ、勝利されていたし、ここは私が奢ります!」

今日は祝杯だ。そんな日にご一緒出来るのなら、少しでもお祝いらしくしたい。

「心鈴ちゃん、俺一応サッカーで飯食ってるんだよね」

簡単に意気込む私に、桜庭さんは自身の生活を教えようとする。

「はい。スポーツ選手というか、個々の頂点を極めた方たちはそうですよね。今日なんて、桜庭さんが積み重ねた毎日の集大成ですよね」

「そう。俺今日めちゃくちゃ仕事したの。だから残念ながら、奢るのは俺かな」

あっさりと、これ以上の懇願は失礼だと悟る。

「…………でしたら、せめて栄養のアドバイスをさせてください……!」

「おー、助かる」

「(これってちょっと、デートみたい?)」

いやいや、そんな、まさかね。

可能性を消すように、頭の中で栄養素を組み立てていた。
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