蝶よ花よ、あこがれに恋して
「(あれ、)」
この反応は、この空気は、少し前に経験──……
「言い忘れてたけど、心鈴ちゃん、ポニーテールが似合うね」
記憶が私に訴えかけた気がしたけれど、それよりも先に、桜庭さんは私が聞きたかった言葉を聞かせてくれる。ご褒美だ。
「……あ、ありがとうございます……」
からだに手を回されているので、軽く、抱きしめられている感覚にひとしい。嬉しい。うれしくて、泣きそうだ。
会話が途切れる。手持ち無沙汰になってしまう。視線が交わされると空気は甘さを孕む。
どうしよう。何を言えば、どうすれば……、
ぐるぐると考えをまとめていれば、彼との距離が縮まってゆく。二度目だからこそ予感めいた私はいそいで桜庭さんの口元に両手を当てた。
それを阻まれたことに苛立ちを感じたらしい、桜庭さんの眉間に皺が寄る。申し訳なさで平民は怯みそうになる。けれど、大事だからこそ、有耶無耶にしたくない。
「……っ、あ、あの……わたし、勘違いされたくないので、言っていいですか……?」
桜庭さんは小さな動作でうなずくと、私の手のひらに、ちゅうと吸い付いたので、「ひえっ!?」と声を荒らげると慌てて手を離した。