蝶よ花よ、あこがれに恋して
手のひらに、き、キスされた……!!!
引っ込めた手のひらは熱を孕み、じんわりと痺れている。
隙を見せた私の腰元を桜庭さんは両手で抱え込んだ。距離が近寄る。イコール、逃げ場がなくなる。
「言いたいことってなに?」
甘えたようにのぞき込まれ、言いたいことが白に散ろうとするのを、なんとか踏みとどまった。
言わずに流される方がずっといい。
だって、私も、したいもん。
桜庭さんのキスに嫌悪はなかった。むしろ気持ちよかった、幸福だった、泣きたくなった。次はいつなんだろうって、でも、次なんて来るのかと考え始めれば自分の浅ましさで恐ろしくなった。
「あ……の……わたし、本来こういうの、彼氏としかしません」
桜庭さんの服を掴むその手が震えた。
「ふうん」と、だけ呟いた桜庭さんは瞬く間に近付き、私のくちびるを攫った。たとえば、親が子どもと軽く戯れているような、一瞬の出来事。
「さ、くらばさん、話、聞いてました?」
「聞いてた、聞いてた」
「き、聞いてませんよね!?」
「でも、しちゃったね?」
首を傾げる桜庭さん、はっきり言ってずるいです。そして私は理解させられる。
「はい……しました……」
彼氏でもない桜庭さんと、二度目のキスをしてしまった。