蝶よ花よ、あこがれに恋して

桜庭さんは、アイドル?


「胡桃沢さん、どうしたんですか?大丈夫?」

あの日から私は毎日がぽやぽやとしてばかりだった。
エックスデー、すなわち、桜庭さんと話した三週間前のあの日だ。

「大丈夫。ちょっと、夢か現実か分からないだけです」

「平常ですね。良かった良かった」

22歳にもなって三週間もふわふわの夢見心地はさすがに何処かで叱られそうなのだけど、残念ながら職場の先輩たちは私に甘い人が多いので、叱られることは無かった。

私は栄養士として健康派のレストランで働いている。
メニューの考案や改良を提案することもあるけれど、多くは調理の補助。ウェイターが少なければ配膳の仕事もする。

短大を卒業後、実は既に転職を経験している。前の職場を早く辞めたくて仕方がない状態での転職活動だったので、最早なんでもする、便利屋でもいいのでという条件でこのお店に就職した。おかげでSNS用の告知のような仕事も任されるのだけど、私の精神的な治安もかなり改善された。


「心鈴ちゃん、もしかして恋活が上手くいった?」


ウェイターの相模さんがひょこっと顔を出したうえに、勝手に予測変換させるので慌てて「まさか!恋じゃないです!」と、否定する。だって恋活ではなく、推し活である。
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