蝶よ花よ、あこがれに恋して
「そうなの?じゃあ俺にもチャンスはあるのかな〜」
独り言か話しかけられているのか判断が付かずに「(ないです)」と、心の中で返事をした。
相模さん、女の子であれば誰でも声を掛けてその気にさせてしまうから気をつけてくださいね、と就職して直ぐ先輩ウェイターの白瀬さんに教えてもらった。それ以来相模さんの言葉は真に受け無いことにしている。
「なんでもかんでもそういうことに繋げるの良くないと思いまーす」
私の代返をしてくれる彼女が白瀬さんで、白瀬さんも相模さんも年齢で言うと私より年上だ。
「そういうことってなんですかー」
「いかがわしいことでーす」
「全然いかがわしくないでーす」
私から派生した会話に耳を傾けながら、桜庭さんは何歳だろう?と私もまた思考回路を桜庭さんへと派生させる。同時に鼓膜の内側では、今朝聞いた桜庭さんの声がリフレインした。
なんと今日、「おはよう」と言われたのだ。無言会釈がおはようにランクアップ。そして推しからの「おはよう」のおかげで今日の私は白瀬さんに心配される程緩んでいたらしい。危険だ。
ちなみにあの日からカレーの日を二巡した。十日に一度の頻度でカレーなのに、桜庭さんには未だお裾分けが出来ずにいる。