蝶よ花よ、あこがれに恋して


恋愛は片想いの時がいちばん楽しい。両想いになれたとしても、幸せな時間は一瞬で、だんだん苦しくなって、二人のものだった熱は冷めていく。それが私の恋愛。

「桜庭さん」

「うん?」

「私と、付き合っても……たぶん、全然たのしくないですよ。桜庭さんが辛くなるに、きまってます……」

やだ。桜庭さんにがっかりされたくない。やだ。桜庭さんを嫌いになりたくない。
この距離感がいちばん良い。絶対、絶対。

桜庭さんが私の身体を揺らす。ゆらゆらと。

「そうかなあ。俺は、心鈴ちゃんと一緒にいると楽しいけどな」

その声が優しくて、じわりと涙が滲んだ。

「心鈴ちゃんは、俺が彼氏じゃ嫌?」

「い、いやなわけ……!!」

「じゃあ、決まり」

決まり……?

恋人、ということ?

今日は身体ばかりじゃなく、思考回路もかなりカロリーを消費している。そして考える。桜庭さんとの恋人らしいキスを。

小学生から短大生まで、どの時代の友人たちへ、私の長所は?と質問をすれば、全員が想像力が豊かだと言うだろう。昔からそれだけは褒められていたし、自分でも、自分の世界に入り込んでしまう、この性格をどうにかしなきゃと悩む時もある。
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