蝶よ花よ、あこがれに恋して
けれども、桜庭さんとのそれらは上手に想像ができない。考えただけで頬に熱が篭って、考えようとするのをやめさせるのだ。
「桜庭さんとたくさんキスしちゃったら、と、溶けちゃいそうなのですが……」
しどろもどろになって答えると、桜庭さんは「溶けんの?」と、楽しそうに微笑んだ。
桜庭さんの視線が逸れる。何かを逡巡しているように。それから、私に焦点が定まる。まるで、私の首を一気に絞めるように。
「見たいって言ったら困る?」
「こ、困ります!」
即座に答えた。その瞬間、過去が脳裏をよぎる。そうだ、自己主張をしすぎたらだめなんだった……!と、絶望的になって見上げたら、その先にいる桜庭さんは、ただ、私を見下ろして微笑んでいた。
「じゃあ慣れるしかないね」
「(……慣れる?)」
優しい言葉が不穏に聞こえるのはどうしてか。
桜庭さんの彼の瞳は私を映し出す。
桜庭さんの手が頬に触れる。その指先は先程とは違い、まるで壊れものを扱うように慎重で、私の不安も徐々に溶かされていく。
目を逸らすのが勿体ない。落ちていた髪の毛を耳に掛けられると、それが合図となり顔が近づく。触れるためだけに重なったくちびる。体の内側で心臓が小さく鼓動を刻む。