蝶よ花よ、あこがれに恋して

俺がロリコン野郎を目撃した間、〝こすず〟を数回見かけた。

初めはあの別れ話から2日後の朝。完全に偶然だった。彼女のまぶたは未だに腫れていたし、碌に寝食の時間が取れていないのも見て取れた。話したこともないのに、事の顛末を見たせいか、気が気じゃなかった。

『(浅い恋愛でダメになりそうな子だな)』

向かいのマンションで自殺者が出ても困るし……と、めんどくさいくせに何かと理由をみつけては次の日、前日と同じ時間に家を出てあの子の出勤を見守った。前日よりも顔色は良くなっており幾分か安心した。

翌日、あの子は現れなかった。まさか……と不安に駆られて見上げるとベランダにて洗濯物を干す彼女を見かけて胸を撫で下ろした。どうやら今日は休みらしい。

その翌日も、やっぱり俺は同じ時間にマンションを出た。あの子が出てくるまでエントランスの植え込みに少し腰かけて待ち、出勤できたかの確認を取り自分も仕事に向かう。特に予定もない日だって、飽きずに、会えるか分からない彼女と会うために。

『(完全にストーカーじゃね?)』

冬稀が居るなら茶化すだろう。でも、冬稀も高校の時同じことやってたよな?と考えては、違和感に気づく。

冬稀は好きな子を振りかせたくてもがいていただけで……俺が冬稀と同じことを?
< 87 / 137 >

この作品をシェア

pagetop