蝶よ花よ、あこがれに恋して



いや、気のせいだろ。

落とし所を自分で決めて蓋をする。

そんなことを1ヶ月続けたころ、彼女は大きなゴミ袋を抱えてマンションから出てきた。そしてゴミの集積所にて『お疲れ様でした!』と手を合わせていた。その表情は1ヶ月前とはまるで違い、清々しさに満ちていた。

もう、見守る必要はないのか。

期待と絶望が入り交じった、おかしな感覚。

あの感情の正体を、俺は近い将来知ることになる。






「そういえば、サッカー選手のお休みって変則的ですよね」

振り向いた心鈴ちゃんの髪が揺れる。俺が、ポニーテールが似合うと言ってから、心鈴ちゃんは料理中にポニーテールをするようになった。ふんわりとした茶色の髪の毛が動く度に揺れて、うん。やっぱ可愛い。

「特に決まってないかな」

「ちなみにですが、就労時間も?」

「うん」

今日はパエリアを作ると張り切っていた彼女は、オーブンで温めている間に手羽元のスープや豆腐のサラダと言った副菜を次々に完成させている。ぽわぽわしていそうな雰囲気とはちがい、さすがに料理を仕事にしているだけあって、その手際は見事だ。

一体、何故料理中に俺の勤務形態を気にするのか。

バックハグの状態でその手元をじいっと見つめていると、心鈴ちゃんが振り向いた。

「にしては、毎日、毎朝、良く出勤時間が重なりますよねえ」

ぎくり、心臓が跳び跳ねる。
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