蝶よ花よ、あこがれに恋して
桜庭さんは、淡白な人?
あの、驚かないで聞いてください。
なんと、桜庭さんとお付き合いすることになりました。
三週間が経過したのだけど、未だに、ちょっと夢か現実か分からなくて、朝目が覚めてすぐに桜庭さんにメッセージを打つならまだしも、LINEのアイコンに向かって「おはようございます!」と挨拶したり、朝マンションの前で偶然会う、ではなく明確に私を待つ桜庭さんを見て……朝から心臓が大暴れしている。
心臓が脈打つ回数は生まれた時に決められているらしい。
であるならば、私の拍動は桜庭さんによって掌握されており、つまりは私の寿命もまた桜庭さんによって短められているのだ。
「(それでもいい!桜庭さん、今日もかっこいい……!!)」
推しから恋人へ変化した途端、桜庭さんがもっと格好よく見えてしまうから大変だ。
桜庭さんは植え込みのレンガに腰掛けてスマホを眺めている。桜庭さんの興味を中断させてしまうので、毎朝、挨拶のタイミングが難しい。
有り余るほどときめきの供給を目から取り入れていると、スマホに向けられていた視線がこちらへ移動する。
彼の頬が微かに緩む。
「いつまで俺は待てばいい?」
──「ぅえッ!?!?」
言葉にならない声が漏れる。