蝶よ花よ、あこがれに恋して


それよりも、大事なことはたくさんある。
特に今週末は一大イベントで、付き合って1ヶ月の記念日なのだ。1ヶ月記念日が日曜日である確率を探してみたら一年に二度あった。記念すべき一度目の日曜と記念日が重なるなんて、もはや祝日だ。わたしも偶然にも休みを取っている。ミラクルだ。

「今日も順調そうでなにより」

白瀬さんには、今まで推し活事情を話していたけれど、今や大半は惚気話だ。よって、毎日半ば挨拶のように、私の恋の安寧を喜んでくれる。

「それにしても、一ヶ月付き合ってたら、悩みのひとつやふたつ、出てくるでしょう」

制服に着替えながら「悩み……」と呟いた。しかし残念ながら全く悩みがない。

「生活スタイルが違うとか」

「特に無いですね。出張は頻繁にある方ですけど、お仕事だって分かってるので」

「出張って、女はいないの〜?」

「いますよ!でも、仕方ないんで!」

桜庭さんのサポーターは女性が多い。これも今に始まったことじゃない。

『ファンの子に手を出すとかありえないから。サポーターはサポーターで、それ以上以下でもない。けど、いつか俺がカバーできない、根も葉もない情報が出ることもある。不安になったら、いつでも言って』

お付き合いをはじめてすぐの頃、桜庭さんは私を正面に座らせて、真っ直ぐに見つめ合い、伝えてくれた。桜庭さんの言葉に嘘偽りがあるとは思わなかった。

それに、頑張ってファンサしようとしている桜庭さんを考えるととても幸福だ。
< 92 / 137 >

この作品をシェア

pagetop