優しい雨が降る夜は
そして翌日。
美月が仕事を終えると、逃がすまいと迎えに来ていた美空に手を引かれて、二人で一旦帰宅した。

「はい、まずはこれに着替えて」
「なに、これ。ワンピース?」
「じっくり見ないで。ほら、なんなら脱がせましょうか?」
「結構です!」

急かされるままワンピースに着替えると、強引にソファに座らされる。

「あとはひたすらじっとしててね。なんなら目を閉じて瞑想してて」
「分かった」
「分かった!?」
「え、だめなの?」
「いえ、どうぞ」
「うむ」

美月は目を閉じて心を無にする。
仕事であれこれ回転させていた頭を休めるように、ゆっくりと深呼吸した。

(はあ、落ち着く。なんならちょっと眠くなってきちゃった)

すると遠くから美空の声が聞こえてきた。

「お姉ちゃん、お姉ちゃん?」
「ん? あれ、美空?」
「もう、寝ないでよ。カックンカックンして、メイクしづらかったんだからね。でもまあ、こんなもんでいいか!」

どれ?と鏡を見ようとすると、美空に腕を引かれて立たされる。

「時間がないわ、行くわよ。靴も玄関に用意してあるから」
「えー? ヒールのある靴は無理よ」
「そう言うと思って、ストラップのローヒールシューズにしたから。足が痛くならないやつ」
「ほんとに痛くならない?」
「お試しあれ。ほら、急いで」

そんな具合に、美月は自分の出で立ちもよく分からないまま玄関を出た。
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