優しい雨が降る夜は
(どうしてこんなことに?)

美月はバックオフィスで一人、組んだ両手に顔を伏せて涙を堪える。

自分が追い込まれた状況も辛いが、館長や桑原を大変な目に遭わせてしまっていることに心が傷んだ。

(なんとかしたい。だけど私が出て行ったら? 大騒ぎになって、利用者さん達にも迷惑をかけてしまう)

ここにいるしかないのだと、懸命に自分に言い聞かせた。

(お願い、もう来ないで。噂なんて早く消えて)

だが美月の願いに反して、次の日も、その次の日も、美月を出せと数人がやって来た。

「すみません、館長。桑原さんも」

頭を下げる美月に、館長も桑原も笑顔で手を振る。

「風間さんはなにも悪くないよ。むしろ被害者だ」
「そうよ。それに私もだてにおばちゃんじゃないからね。何度聞かれても知りませーんって、すっとぼける面の厚さよ。あはは!」

二人の優しさに、美月は涙が込み上げてきた。

慌てて指先で目尻を拭う美月の背中を、桑原がそっとさする。

「美月ちゃん、しばらく休んだらどう?」
「え?」
「バックオフィスに閉じこもってたら、気分が滅入っちゃうでしょ。普段忙しくしてる分、ゆっくり羽伸ばして来たら?」

すると館長も頷いた。

「それがいいよ。風間さん、有休もたくさん残ってるんだし」

美月は少し考えを巡らせる。
出勤しても大して役に立てず、むしろ迷惑をかけてしまう今のこの状況では、来ない方がいいだろう。

そう思い、5日間休ませてもらうことにした。
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