優しい雨が降る夜は
服や身の回りのものはネットで注文し、明日の朝に最速で届けてもらうことにした。

「君は寝室を使って。シーツも新品に変えてある」
「雨宮さんは?」
「俺はこれからアメリカの本社と、オンラインミーティングがあるんだ。そのままソファで寝るから」
「えっ、あの」

戸惑う美月を残し、優吾は「おやすみ」とリビングに戻る。

ミーティングの邪魔をする訳にはいかず、美月はおとなしくベッドを借りて横になった。

シーツは真新しいが、ベッドからはほのかに良い香りがしてドギマギする。

するとスマートフォンに電話がかかってきた。
表示を見てから、美月は通話ボタンをスワイプする。

「もしもし、美空?」
『お姉ちゃん! ちょっと、大丈夫なの?』
「ああ、もしかしてSNSのこと? もう美空も知ってるのね」
『この間の合コンのグループメッセージで知ったの。みんな、スーザン姉さん大丈夫!? って、心配してたよ』
「そう、ありがとう。大丈夫だから心配しないでって言っておいて」
『でもお姉ちゃん、一人だと身動き取れないでしょ? 私、これから終電でそっちに帰ろうか?』

ええ?と美月は驚いた。

「それこそ危ないわ。だめよ、美空。それに私、自宅のマンションじゃなくて知り合いのところに泊めてもらってるから」
『そうなの? それなら良かった。って、誰よそれ。もしかして、男?』
「お、女の人」
『嘘だ!』
「どうしてよ。私に恋人がいるとでも思うの?」
『そりゃ、少し前までなら女の人だって疑わなかったけど、この間ショッキングな話聞いちゃったもんね。お姉ちゃん、隅に置けないわ。その証拠に、イケメンピアニストと噂になるなんて……。はっ、まさか! お姉ちゃん今、そのピアニストのところに?』

やれやれと美月はため息をつく。

「そんな訳ないでしょう? とにかく私のことは気にしないで。美空こそ、しばらくは実家の横須賀から大学に通った方がいいわ」
『私は学生だからどうにでもなるけど、お姉ちゃん、仕事は?』
「ああ、それも5日間有給休暇もらってるから心配しないで」
『えっ、その間どこでなにするの?』
「さあね。あっ、充電なくなりそうだから、もう切るわね」
『ちょ、待って、お姉ちゃん!』
「おやすみー」

プツッと電話を切ると、枕元にスマートフォンを置いて目を閉じた。
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