優しい雨が降る夜は
道の駅で海鮮丼を食べてから、二人は優吾のマンションに戻って来た。
「雨宮さん、運転ありがとうございました。今コーヒーを淹れますね」
「ありがとう」
優吾はダイニングテーブルでパソコンを広げて、仕事を始める。
美月は優吾の前にコーヒーカップを置くと、買ってきた食材で早速料理を始めた。
和食がいいという優吾のリクエストで、美月はナスの揚げ浸しやオクラの酢の物、夏野菜の天ぷらなどを次々と作る。
「すごいご馳走だな」
「地味な家庭料理ですよ?」
「いや、すごく豪華だよ。いただきます」
買ってきた採れたての野菜はどれも美味しく、優吾は綺麗に平らげた。
食後のお茶をのんびり味わっていると、優吾と美月のスマートフォンが同時に鳴り始めて驚く。
「びっくりした。光太郎か」
「私は美空からです」
表示を確かめてから、それぞれ電話に出た。
「もしもし、光太郎?」
『優吾、お前今うちか? 誰と一緒だ?』
「なんだよ、急に」
『そらちゃんから連絡あったんだ。お姉ちゃんが誰かのうちに泊めてもらってるらしいけど、見当がつかないって。で、俺はピンと来た訳さ。滅多にテレワークしない優吾が、なんでまた今日に限って在宅してるのか。だからそらちゃんに言ったんだ。お姉ちゃん、優吾のところじゃないかって。どうだ? 正解だっただろ』
「……なんで決めつけるんだよ」
『だって俺、今そらちゃんと一緒にいるからさ。つきちゃん、そらちゃんと電話してるだろ? 声が聞こえるもんね』
優吾がチラリと横目で様子を伺うと、美月はスマートフォンを握りしめて「だからね、美空。これには事情があって……」と話している。
『はい、隠しても無駄ですよー。説明してもらおうじゃないの』
光太郎の言葉に、優吾は小さくため息をついた。
「だから、これと言って説明することはない。たまたまカフェで会って、事情を聞いたからには放っておく訳にはいかなかった。大体、つきちゃんってなんだ。なんでお前がそんな親しげに呼ぶ?」
『単に美空と美月が間違いやすいからだけど。おやおや、もうヤキモチですか?』
「違うわ!」
『硬派のお前が自分の部屋に女の子上げるなんて、一度も聞いたことないけど?』
「だから、人助けだってば」
『人助けねえ。まあ、いいや。明日クライアント訪問のあと、オフィスに顔出すだろ? 待ってるからな。じゃ』
「待たんでいい……あ、おい!」
そこでプツリと通話は切れた。
美月も電話を終え、申し訳なさそうに頭を下げる。
「すみません、雨宮さん。美空が光太郎さんに話をしたらしくて……。私が雨宮さんのところでこうしてお世話になっているのがバレてしまって」
「いや、別に隠すことでもないから構わない。それにしても、いつの間にあの二人?」
「そうですよね。どうやら頻繁に連絡を取っていたみたいです」
「光太郎は押しが強いからな。大丈夫か? 美空ちゃん」
「美空の方こそグイグイ迫るタイプなので、光太郎さんのご迷惑になっていないか心配です」
「それはない。けど、あいつは俺と同じ28だぞ。美空ちゃんから見ればオジサンだろ?」
「そんなことないですよ。美空は好みのタイプでなければ、連絡なんてしないですから。それにあの子も今年で22歳になりますし。それで、あの、申し上げにくいのですが……」
視線を落とす美月に、優吾は「ん? なに」と先を促す。
「はい、実は私は美空と二人暮らしなのですが、こういう状況ですので、美空にもマンションには帰らず、横須賀の実家から通うようにと言ってあったのです。それなのにこんな夜更けに光太郎さんと一緒にいるなんて、もしや……」
ああ、と優吾も顔をしかめた。
「あいつ、人のことばかり言って自分のことは棚に上げたな。明日、俺から言っておく。すまない。軽い気持ちで女の子に手を出すようなやつじゃないけど、美空ちゃんはまだ学生だもんな」
「いえ、美空こそご迷惑をおかけしているかもしれません。姉妹揃って申し訳ありません」
「気にしなくていい。さてと、君はそろそろ休んだ方がいい」
「あっ、オンラインミーティングですね。はい、私はお部屋に戻らせていただきます。雨宮さん、もしよろしければ夜食にでもどうぞ」
美月は小皿のおつまみとお茶漬けを用意すると、トレイに載せてテーブルに置く。
「ありがとう、いただくよ」
「はい。それではお先に失礼します」
「ああ、おやすみ」
美月は「おやすみなさい」と笑顔で答えてから、リビングをあとにした。
「雨宮さん、運転ありがとうございました。今コーヒーを淹れますね」
「ありがとう」
優吾はダイニングテーブルでパソコンを広げて、仕事を始める。
美月は優吾の前にコーヒーカップを置くと、買ってきた食材で早速料理を始めた。
和食がいいという優吾のリクエストで、美月はナスの揚げ浸しやオクラの酢の物、夏野菜の天ぷらなどを次々と作る。
「すごいご馳走だな」
「地味な家庭料理ですよ?」
「いや、すごく豪華だよ。いただきます」
買ってきた採れたての野菜はどれも美味しく、優吾は綺麗に平らげた。
食後のお茶をのんびり味わっていると、優吾と美月のスマートフォンが同時に鳴り始めて驚く。
「びっくりした。光太郎か」
「私は美空からです」
表示を確かめてから、それぞれ電話に出た。
「もしもし、光太郎?」
『優吾、お前今うちか? 誰と一緒だ?』
「なんだよ、急に」
『そらちゃんから連絡あったんだ。お姉ちゃんが誰かのうちに泊めてもらってるらしいけど、見当がつかないって。で、俺はピンと来た訳さ。滅多にテレワークしない優吾が、なんでまた今日に限って在宅してるのか。だからそらちゃんに言ったんだ。お姉ちゃん、優吾のところじゃないかって。どうだ? 正解だっただろ』
「……なんで決めつけるんだよ」
『だって俺、今そらちゃんと一緒にいるからさ。つきちゃん、そらちゃんと電話してるだろ? 声が聞こえるもんね』
優吾がチラリと横目で様子を伺うと、美月はスマートフォンを握りしめて「だからね、美空。これには事情があって……」と話している。
『はい、隠しても無駄ですよー。説明してもらおうじゃないの』
光太郎の言葉に、優吾は小さくため息をついた。
「だから、これと言って説明することはない。たまたまカフェで会って、事情を聞いたからには放っておく訳にはいかなかった。大体、つきちゃんってなんだ。なんでお前がそんな親しげに呼ぶ?」
『単に美空と美月が間違いやすいからだけど。おやおや、もうヤキモチですか?』
「違うわ!」
『硬派のお前が自分の部屋に女の子上げるなんて、一度も聞いたことないけど?』
「だから、人助けだってば」
『人助けねえ。まあ、いいや。明日クライアント訪問のあと、オフィスに顔出すだろ? 待ってるからな。じゃ』
「待たんでいい……あ、おい!」
そこでプツリと通話は切れた。
美月も電話を終え、申し訳なさそうに頭を下げる。
「すみません、雨宮さん。美空が光太郎さんに話をしたらしくて……。私が雨宮さんのところでこうしてお世話になっているのがバレてしまって」
「いや、別に隠すことでもないから構わない。それにしても、いつの間にあの二人?」
「そうですよね。どうやら頻繁に連絡を取っていたみたいです」
「光太郎は押しが強いからな。大丈夫か? 美空ちゃん」
「美空の方こそグイグイ迫るタイプなので、光太郎さんのご迷惑になっていないか心配です」
「それはない。けど、あいつは俺と同じ28だぞ。美空ちゃんから見ればオジサンだろ?」
「そんなことないですよ。美空は好みのタイプでなければ、連絡なんてしないですから。それにあの子も今年で22歳になりますし。それで、あの、申し上げにくいのですが……」
視線を落とす美月に、優吾は「ん? なに」と先を促す。
「はい、実は私は美空と二人暮らしなのですが、こういう状況ですので、美空にもマンションには帰らず、横須賀の実家から通うようにと言ってあったのです。それなのにこんな夜更けに光太郎さんと一緒にいるなんて、もしや……」
ああ、と優吾も顔をしかめた。
「あいつ、人のことばかり言って自分のことは棚に上げたな。明日、俺から言っておく。すまない。軽い気持ちで女の子に手を出すようなやつじゃないけど、美空ちゃんはまだ学生だもんな」
「いえ、美空こそご迷惑をおかけしているかもしれません。姉妹揃って申し訳ありません」
「気にしなくていい。さてと、君はそろそろ休んだ方がいい」
「あっ、オンラインミーティングですね。はい、私はお部屋に戻らせていただきます。雨宮さん、もしよろしければ夜食にでもどうぞ」
美月は小皿のおつまみとお茶漬けを用意すると、トレイに載せてテーブルに置く。
「ありがとう、いただくよ」
「はい。それではお先に失礼します」
「ああ、おやすみ」
美月は「おやすみなさい」と笑顔で答えてから、リビングをあとにした。