優しい雨が降る夜は
静かな語らい
翌朝。
優吾はアメリカとのオンラインミーティングを終えると、美月の作った朝食を食べてからスーツに着替えた。

「今日はクライアントとの打ち合わせのあと、オフィスにも顔出してくる。俺のことは気にせず、自由に過ごしてて。これが合鍵」
「ありがとうございます。あの、マンションの敷地内をお散歩してもいいですか?」
「ん? ああ、もちろん。図書室もあるしカフェあるから、のんびりしたらいい」
「ありがとうございます。行ってらっしゃいませ」
「行ってくる」

髪型を綺麗に整えた優吾は、キリッとした表情で玄関を出て行った。

「さてと。お掃除やとお洗濯、食事の下ごしらえもしなくちゃ」

美月は張り切って腕まくりすると、リビングの大きな窓を開けて家事を始める。

ひと通り終えると昼食は簡単なもので済ませて、SNSをチェックしてみた。

だがアカウントを持っていないし、使い方もよく分からない。

「どういう記事になのかしら。ほんとに噂になってるのかな?」

館長に見せてもらった不鮮明な1枚の写真。

それだけでこんなにも大きな騒動になるのが、未だに信じられない。

美月は様子をうかがいがてら、館長に電話してみることにした。

「もしもし、館長。風間です」
『あっ、風間さん! 大丈夫?』
「はい、私は大丈夫です。すみません、館長。そちらはまだ大変な状況でしょうか?」
『それがね、マスコミも来るようになったからさすがに手に負えなくて、近くの交番に相談してみたんだ。そしたら見回りに来てくれてね。施設にご用がなければお帰りくださいって声かけてくれて、マスコミも追っかけの女の子も引き揚げていったよ』

警察にまで!?と美月は驚いたが、館長は、結果として落ち着いたから良かったよと笑う。

「すみません、館長。お手数おかけしました。予定通り、4日後には出勤しますね」
『無理しなくていいからね。また様子が変わったら連絡するよ』
「はい、ありがとうございます。桑原さんにも、くれぐれもよろしくお伝えください」

そう言って電話を切った。
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