優しい雨が降る夜は
一方、クライアント訪問を終えてオフィスに向かった優吾は、待ち構えていた光太郎にガシッと肩を組まれた。
「お待ちしてましたよー、色男さん。あちらのお席へどうぞー」
オフィスはフリーアドレス制の為、席は常に自由だ。
光太郎は壁際の空いているエリアに優吾を連れて行った。
「で? どういうことなんだ?」
「どうもこうもない。噂になって追い回されてる彼女を助けただけだ。そっちこそ、まだ学生の美空ちゃんになにやってる?」
「おいおい、俺達のピュアな恋に難癖つける気かよ?」
「ちゃんと本気なのか? 遊びじゃないだろうな?」
「もちろん。そのセリフ、そっくりそのままお返ししますよ」
「俺は、別に……」
口ごもると、光太郎は頭の後ろで両手を組んで誰にともなく呟く。
「いやー、人助けって響きはいいけど、やってることはなかなかじゃないですかねー? 君が好きだから放っておけないんだ、って言った方が男らしいと思いますけどー?」
「好きでもない相手に好きだと言う方がどうかしている。それにどう思われようが、俺はあの時、困ってる彼女を放っておけなかった。それだけだ」
仏頂面で答える優吾に、光太郎は手をほどいて身を乗り出した。
「じゃあたとえ相手が誰であっても、同じように部屋に泊めたか?」
「それは……。彼女は数回見かけただけだったが、人柄がいいのは分かったし、本当に困っている様子だったから」
「ふうん。まあ、つきちゃんもそれを受け入れたってことは、よほど困ってたんだろうな。そらちゃんも心配してたし、確かに大変な状況だとは思う。知ってるか? テレビのワイドショーでも取り上げられてんだぜ」
えっ!と優吾は驚いて目を見開く。
「まさか、そこまで?」
「ああ。今もお昼の番組でやってるかも」
そう言うと光太郎は、スマートフォンを取り出して操作し始めた。
「あ、ほら。これ」
音量を上げると進行役のアナウンサーが「続いてはこちら。今なにかと噂の、若手イケメンピアニストの話題です」とカメラ目線で話している。
VTRに切り替わり、友利 健二がステージでピアノを弾いているシーンが映し出された。
ナレーションが「海外でのコンクール入賞後、凱旋公演も大盛況。熱い期待に応えて全国ツアーを回り始めた友利 健二。ファンの人達の声は?」と映像にかぶせる。
終演後のホールでマイクを向けられて、女の子達が興奮気味に話していた。
「もう貴公子みたいです! 雰囲気にやられました」
「かっこいいし、ピアノは上手いし、うっとり」
「なんか女の人と噂になってますけどー、芸能人でもない普通の人ですよね? 私は信じません! 彼に釣り合わないもん」
「そうそう。彼の恋人はピアノだけです!」
あはは!と女の子達は明るく笑い飛ばしている。
優吾は思わず視線をそらした。
「よりによってこんな時に全国ツアーか。友利 健二はしばらくは公の場に出続ける。噂はなかなか収まらないかもな」
光太郎の言葉に、優吾は拳をギュッと握りしめた。
「優吾、つきちゃんの様子は? こんなテレビやSNSで傷ついてないといいけど」
「うちではテレビはつけていないし、彼女はSNSもやっていない。多分、なにも耳には入ってないはずだ」
「そうか、それならいいけど。ちゃんと守ってやれよ」
「分かってる」
優吾はしっかりと頷いてみせた。
「お待ちしてましたよー、色男さん。あちらのお席へどうぞー」
オフィスはフリーアドレス制の為、席は常に自由だ。
光太郎は壁際の空いているエリアに優吾を連れて行った。
「で? どういうことなんだ?」
「どうもこうもない。噂になって追い回されてる彼女を助けただけだ。そっちこそ、まだ学生の美空ちゃんになにやってる?」
「おいおい、俺達のピュアな恋に難癖つける気かよ?」
「ちゃんと本気なのか? 遊びじゃないだろうな?」
「もちろん。そのセリフ、そっくりそのままお返ししますよ」
「俺は、別に……」
口ごもると、光太郎は頭の後ろで両手を組んで誰にともなく呟く。
「いやー、人助けって響きはいいけど、やってることはなかなかじゃないですかねー? 君が好きだから放っておけないんだ、って言った方が男らしいと思いますけどー?」
「好きでもない相手に好きだと言う方がどうかしている。それにどう思われようが、俺はあの時、困ってる彼女を放っておけなかった。それだけだ」
仏頂面で答える優吾に、光太郎は手をほどいて身を乗り出した。
「じゃあたとえ相手が誰であっても、同じように部屋に泊めたか?」
「それは……。彼女は数回見かけただけだったが、人柄がいいのは分かったし、本当に困っている様子だったから」
「ふうん。まあ、つきちゃんもそれを受け入れたってことは、よほど困ってたんだろうな。そらちゃんも心配してたし、確かに大変な状況だとは思う。知ってるか? テレビのワイドショーでも取り上げられてんだぜ」
えっ!と優吾は驚いて目を見開く。
「まさか、そこまで?」
「ああ。今もお昼の番組でやってるかも」
そう言うと光太郎は、スマートフォンを取り出して操作し始めた。
「あ、ほら。これ」
音量を上げると進行役のアナウンサーが「続いてはこちら。今なにかと噂の、若手イケメンピアニストの話題です」とカメラ目線で話している。
VTRに切り替わり、友利 健二がステージでピアノを弾いているシーンが映し出された。
ナレーションが「海外でのコンクール入賞後、凱旋公演も大盛況。熱い期待に応えて全国ツアーを回り始めた友利 健二。ファンの人達の声は?」と映像にかぶせる。
終演後のホールでマイクを向けられて、女の子達が興奮気味に話していた。
「もう貴公子みたいです! 雰囲気にやられました」
「かっこいいし、ピアノは上手いし、うっとり」
「なんか女の人と噂になってますけどー、芸能人でもない普通の人ですよね? 私は信じません! 彼に釣り合わないもん」
「そうそう。彼の恋人はピアノだけです!」
あはは!と女の子達は明るく笑い飛ばしている。
優吾は思わず視線をそらした。
「よりによってこんな時に全国ツアーか。友利 健二はしばらくは公の場に出続ける。噂はなかなか収まらないかもな」
光太郎の言葉に、優吾は拳をギュッと握りしめた。
「優吾、つきちゃんの様子は? こんなテレビやSNSで傷ついてないといいけど」
「うちではテレビはつけていないし、彼女はSNSもやっていない。多分、なにも耳には入ってないはずだ」
「そうか、それならいいけど。ちゃんと守ってやれよ」
「分かってる」
優吾はしっかりと頷いてみせた。