優しい雨が降る夜は
夜になり、帰宅した優吾を美月は玄関で出迎えた。

「お帰りなさい、お疲れ様でした」
「ただいま。なにか変わったことは?」
「いいえ、なにも。昼過ぎにマンションを散策して来ました。図書室がとても素敵で、たくさん本があるので、読みふけってしまいました」
「そうか、それなら良かった」
「すぐに夕食にしますね」

美月がキッチンに戻ると、優吾は着替えを済ませてからダイニングテーブルに着く。

「今夜は夏野菜のスープカレーにしてみました。マンションの1階にある輸入品のスーパーを覗いたら、香辛料の種類が豊富だったので作りたくなってしまって」
「ということは、スパイスから作ったのか?」
「はい。辛さはお好みで変えますので、試食していただけますか?」

そう言って美月は、小皿にルーをよそって差し出した。

「いい香りだな。いただきます」

ひと口食べて、優吾は目を見開く。

「うまい」
「本当に?」
「ああ。インド料理店みたいな本格的な味だ」
「良かったです。ではすぐ用意しますね」
「大盛りで頼む」
「ふふっ、はい。かしこまりました」

野菜たっぷりでスパイスが効いたスープカレーを、優吾はあっという間に食べ終えた。

「美味しかった。うちでこんなに本格的な食事をするなんて、初めてだ」
「そんなに? カレーなんて、典型的な家庭料理なのに」
「俺にはなによりのご馳走だ。ありがとう」
「いいえ。食後のコーヒーを淹れますね」
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