優しい雨が降る夜は
部屋の露天風呂を再び満喫し、和菓子と抹茶を茶室で味わう。

部屋で夕食を食べ終えると、今度は裏庭で手持ち花火を楽しんだ。

「とっても贅沢な2日間でした。雨宮さん、本当にありがとうございました」

綺麗な長い指で線香花火を手にし、美月は改めて優吾にお礼を言う。

「どういたしまして。こちらこそ楽しかった。俺の休暇につき合ってくれてありがとう」
「いえ、そんな……。夢みたいな時間でした。現実なのか、まだ信じられないくらい」

パチパチとかすかに弾ける線香花火を見つめて、美月は小さく呟く。

やがてポトリと火が落ちると、名残惜しむような、切なげな笑みを浮かべた。

その表情に、優吾は胸が締めつけられる。

「もとの生活に……戻れるかな」
「え?」

我に返って聞き返すと、美月は「なんでもありません」と笑って首を振った。
< 56 / 93 >

この作品をシェア

pagetop