優しい雨が降る夜は
「おまたせ。さっきの子達、知り合いだった?」
「合コンでご一緒した方々です」

大人の余裕を漂わせてさり気なく尋ねたつもりが、いきなりカウンターパンチを食らって動揺する。

「ご、合コン? 君が?」
「はい、やむにやまれず人数合わせで」
「その割りにはまた会いたそうだったね、彼ら」
「社交辞令ですよ。真に受けるほど身の程知らずではありません」

至って真面目に答える美月に、優吾は心の中で考えた。

(いや違う、彼らは本当に会いたそうだった。なぜこうもモテる? 友利 健二の他にお見合い相手と合コン仲間。ライバルは何人いるんだ?)

すると美月が居住まいを正した。

「あの、雨宮さん。先日は本当にお世話になりました。改めてお礼に伺おうと思っておりましたが、お忙しいかもしれないと躊躇してしまい……。遅ればせながら、こちらをお納めください」

そう言って両手を揃えて封筒をテーブルに置く。

「なにこれ?」
「この額では足りないかと存じますが、せめてものお礼にと……」
「まさか。お金なんて受け取れないよ」

封筒を押し戻すが、美月も押し返してきた。

「それでは私の気が済みませんから。どうかお受け取りください」
「本当にいらない。じゃあ代わりに教えてほしいことがある」
「はい、なんなりと」
「君の誕生日はいつ?」

は?と美月は拍子抜けしたように顔を上げる。

「私の誕生日、ですか?」
「そう。どうしても知りたい。教えてくれたらお礼はいらないから」
「そこまでですか? えっと、わたくしは25年前の9月25日にこの世に誕生しました」
「9月25日? 来月じゃないか!」
「は、はい! 申し訳ありません」

思いのほか大きな声を出してしまい、美月が身を縮こめる。

「いや、ごめん。驚いてしまって、つい……。誕生日はなにか予定は?」
「いつも通り仕事です」
「仕事が終わったら?」
「帰宅します」
「そうか……」
「あの、それがなにか?」

怪訝そうに美月に聞かれて、思わず「なんでもない」と答えてしまった。
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