優しい雨が降る夜は
「そら!」
「こうちゃん! ありがとう、迎えに来てくれて」

店に着いたと光太郎がメッセージを送ると、すぐに美空が現れた。

「優吾さん、こんばんは」
「こんばんは」
「お姉ちゃん、ちょっと酔っ払っちゃって。私はこうちゃんの部屋に泊まるので、お姉ちゃんのことお願い出来ますか? もうすぐ出て来るので」

え?と驚いていると、光太郎が「もう一台呼んでおいたぞ」と言ってから、美空をタクシーに促して乗り込む。

「じゃあなー、優吾」
「お姉ちゃんのこと、お願いしまーす」

去って行く二人のタクシーを呆然と見送っていると、ガヤガヤと店から数人のグループが出て来た。

女の子3人と男の子5人に囲まれているのは、美月だった。

「スーザン姉さん、大丈夫?」
「ええ、大丈夫よ。人生まだまだこんなものではないわ」
「いや、人生までは語らなくていいから」

すると男の子の一人が、ふと顔を上げて優吾を見た。

「あっ、姉さんの彼氏さんですか? すみません、姉さん酔っ払っちゃって。俺達これからカラオケ行くんです。姉さんのこと、お願い出来ますか?」
「ああ、分かった」
「よろしくお願いします。じゃあね、スーザン姉さん」

またねー!と手を振る皆に、美月も手を振り返す。

「ありがとう、みんな。風間 美月、みなさまのおかげで25歳のこの日を迎えられました。この一年はとにかく健康に留意し、足腰丈夫な身体でいたいと……」
「街頭演説はいいから、行くぞ」

優吾は美月の手を引いて、光太郎が呼んでおいたタクシーに乗った。
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