優しい雨が降る夜は
(良かった、だいぶ熱が下がったわ)

朝になり、美月は優吾の額に手を当ててホッとする。

(これなら、もう一日ぐっすり眠れば大丈夫そう)

8時になると、美月はインターフォンの内線で、マンション内のクリニックに電話をかけた。

「昨夜から熱があるので、そちらに連れて行きたいのですけど、何時から開いてますか?」

すると『これからすぐでよろしければ、お部屋まで往診に行けますよ。ご本人のカルテもあるので』と言われて、お願いすることにした。

(高級マンションって、こんなにすごいのね)

感心していると、10分後に白衣を着たドクターが、カバンを手にやって来た。

「すみません、診察時間前に」

恐縮しながらドアを開けると、ドクターはにこやかに美月に首を振る。

「いいえ。この季節はそんなに忙しくないのでね。患者さんはどちらかな?」
「こちらです。体温計がないので分からないのですが、昨夜は38℃は超えていたかもしれません。今はかなり下がっているように思います」

ドクターを寝室に案内して、美月は優吾に声をかける。

「雨宮さん、お医者様に診ていただきますね」

優吾はよく眠ったままだった。

美月はドクターに「お願いします」と頭を下げてから寝室を出る。

しばらくすると、診察を終えたドクターがドアを開けて出て来た。

「単なる風邪ですね。心臓の音も綺麗ですし、汗もしっかりかいているので、特に心配いりません。疲れが溜まっていたのでしょう。このままゆっくり寝かせてあげてください。薬も出しておきますね」
「はい、ありがとうございました」

ドクターの言葉は頼もしく、美月はようやく心細さから開放された。
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