優しい雨が降る夜は
「風間さん、風間さん?」

肩を揺さぶられて、美月の意識はゆっくりと浮上する。

次の瞬間ハッとして、勢い良く身体を起こした。

その拍子に美月の頭が、ゴツンとなにかにぶつかる。

「イッテ!」
「あ、ごめんなさい!」

慌てて謝ってから、更に慌てた。

「雨宮さん! すみません、大丈夫ですか?」

優吾は額に片手を当てて頷く。

「ああ、大丈夫だ。今のでシャキッと目が覚めた」
「そんな、本当にごめんなさい。熱は?」

美月が手を伸ばして額の熱を確かめようとすると、優吾はその手をグイッと引き寄せたた。

そのまま互いの額をコツンと合わせて、優吾がささやく。

「どう? まだ熱ある?」
「……ううん。もう、平気みたいです」
「君の方が熱くないか?」
「えっと、それは……」

あまりの顔の近さに、美月は耳まで真っ赤になっていた。

「君が看病してくれたの?」
「はい。これくらいしか出来なくて」
「ずっとそばにいてくれたの? ひと晩中」
「そうです」
「じゃあ、あれは夢ではなかったのか?」
「ど、ど、どれのことでしょう?」

少しでも動けば唇が触れそうで、美月は固まったまま尋ねる。

「夢の中で、君に会えた。嬉しくて、君が好きだと伝えたら、君も答えてくれたんだ」
「な、なんて?」
「あれ、分からない? じゃあやっぱり、俺の夢だったのか」

美月はチラリと視線を上げる。

ん?と優しく微笑む優吾に、思わず涙が込み上げてきた。

「夢じゃ、ないです」
「え?」
「あなたが、会いたかったと言ってくれたから、私もですって答えました。そばにいてって言ってくれたから、ずっとずっとそばにいますと答えました」
「……それだけ?」

美月は潤んだ瞳で優吾を見つめる。

「あなたが……私を好きだと言ってくれたから、私も伝えました。あなたのことが、大好きって」

気づいた時には、美月は優吾の大きな腕の中にいた。

ギュッと強く抱きしめられ、心が切なさでしびれる。

「良かった、やっと伝わった」
「……はい」
「夢が現実になった」
「……ううん。最初から現実だったと思う」
「え?」
「だって、ずっと前から私、あなたのことが好きだったから」

優吾がふっと笑みをもらすのが分かった。

「そうだな。俺もずっと前から、君のことが好きだったんだ」
「私もです」

互いの温もりを感じながら抱きしめ合い、二人で気持ちを確かめ合っていた。
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