優しい雨が降る夜は
「どうぞ、入って」
「はい、お邪魔します」

これまで何度も来たことがあるのに、なぜ今日はこんなにも緊張するのか。

美月は右手と右足が一緒に出そうなほど、ぎこちなく部屋に上がった。

「夕食は食べた?」
「いえ、まだです」
「俺もだ。軽くなにか作るよ」
「わ、わたくしにやらせてください!」

じっとしていてはますます緊張感が高まりそうだと、美月はキッチンでテキパキと食事の準備をする。

「慣れてるね、奥さん」
「いえ、それほどでも……奥さん!?」
「おっと、危ない」

驚いてお皿を落としそうになった美月の手を、優吾が上から握りしめた。

「あの、あの、あの」
「ん? どうした?」

自分はこんなにもアタフタしているのに、なんと落ち着いた大人の雰囲気なのか。

美月は、自分が優吾にとってあまりにも幼いのではないかと不安になる。

「あの、えっと。お食事のあと、お話させていただいてもいいですか?」
「なに? 改まって」
「はい、後ほど」

そそくさと背を向けると、美月はあとでどう切り出そうかと思案していた。
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