初恋
 これが他の女子相手なら、わざと品でも作って「俺も可愛い?」なんて言って笑うところだけれど、彼女相手にそれはしたくなかった。

 中一までの万里は小さくて、姉とも双子みたいに似てると言われることが多かったが、中二からはどんどん背が伸びて男っぽくなったし、これでもけっこうモテるのだ。

(まあ、付き合っても一ヶ月くらいしか持たないけど)

 原因は、まあ、いい彼氏じゃないからだろう。電話は嫌いだし、ベルも持たないし、彼女より男友達と遊ぶ方を優先するし。

(だいたい姉貴が、どこが好きとかなんとか、いちいち首突っ込んでくるから面倒くさい)

 そんなことを一瞬で考え、げっそりした顔になった万里に、一花はにっこりと笑った。

「香坂姉弟は、二人ともすごいモテるよね」
「モテない!」
「えっ?」
「えっ?」

 なんでもないように言われたのがなぜか不快でとっさに強く否定してしまい、二人で戸惑う。

「あ、ごめん。なんか言い方きつくなった」
「そんなことはないけど……なんか、ごめん」
「いや、俺の方が」

 そんな感じでごめんね合戦をした後笑い合い、しばらく何でもない話をした。

 一時間近く話をしただろうか。

 予定は急ぎじゃないと言う一花を誘い、二人で町をぶらついた。たしか、彼女がゲーセンに行ったことがないというから、今から遊ぼうと誘ったのだったように思う。

 やってみたことがないことをしてみたい。

 その言葉に勇気づけられ、ゲーセン行って、ラーメン屋で昼食をとり、クレープも食べた。
 いちいち驚いたり喜んだりしてくれるのが楽しくて嬉しくて、今日ばかりは他の知り合いに会いたくないと願い、実際会わずに過ごせて楽しかった。
 秘密を共有してるみたいだったし、本音を言えば、生まれて初めてデートをしている気持ちだったのだ。


 結局夕方まで遊んで、
「また新学期に」
と言って別れた。本当は一花相手なら電話をしてみたいとも思ったけれど、急に恥ずかしくなって言えなかった。

 そのことを、長い事後悔した。

 あの凛とした背中に憧れていたことに気づいたのは、新学期が始まってからだ。


 クラスは持ち上がりなのに、そこに一花はいなかった。
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