桃色のアリス ~暗黒の魔女とアリスの想い~
「私ね、旅をしていて、沢山大変なことがあったの。疲れて寝ちゃうくらい」
「その旅の中で、私はダイナに会ったの。ダイナは私たちアリスの為に、私が悲しい思いをしないために魔法をかけようとしてくれた。猫が魔法を使えるって不思議な気がするけど……そんな優しいダイナがしようとしたことだから、ダイナなりに私を気遣ってくれたんじゃないかなって分かる。ハンプティと話していたらほっとするし、元気が出たから」
喋っていると、だんだんと何が何だか分からなってきて、最後の方は声が小さくなっていく。脈絡がはっきりとしていないし、上手くまとめられてない。
「ごめんなさい、説明下手くそだよね」
「ううん、解るよ。君の言っていること。嬉しいよ。ありがとう、一生懸命伝えてくれて」
「う、うん! 私こそ、聞いてくれてありがとう!」
私の手に落ちる温もり。ハンプティの手が重なって、私の手は触れるだけの優しい咆哮を受ける。優しく、優しく。触れたら割れてしまいそうに、儚げに触れ合う手。ハンプティは、どこか儚い。
瞬きをすれば消えてしまいそうなほど、ハンプティは儚げに見える。キラキラと太陽の光を受ける金色の髪が、白い肌が、周りの景色がそう見せるのかもしれない。
「よーし、じゃあアリス、このダイヤの城でゆっくりしてきなよ。ゆっくり、疲れをとって元気になって」
「ありがとう、でも私直ぐに行かなくちゃいけないところがあるの。あっ、私チェシャ猫のところに戻らなきゃ!」
不可抗力とはいえ、具合の悪そうなチェシャ猫を置いてきぼりにしてしまっている。なるべく側にいたいのに、ここで休んでしまってそれは叶わない。
「そっか、大変なんだね。チェシャ猫さんの部屋は分かる?」
ハンプティがお尻や背中についた草を落としながら立ち上がる。慌てて立ち上がっていた私も、エプロンドレスについた草を払う。
「部屋は、確か三階だったと思うんだけど、よく覚えてないんだよね。えっと、廊下にトランプ兵の像があったような」
「それなら僕が案内するよ」
「わ、ありがとう!」
ハンプティは私の手をとると、一気に駆け出す。私は躓かないように足取りを合わせた。
金色の髪が、走るリズムにあわせて左右にさらさらと揺れる。足取りは軽やかで、機嫌が良さそうなハンプティ。けれど城の中へ続く階段を前に、ピタリと止まってしまった。
「アリス、先行ってくれる?」
「え? うん。でもどうしたの?」
少し困ったように眉を寄せ、自分でも不思議そうにハンプティは首を傾ける。
「うん、僕、よく階段とか高い所に登ると意識飛ぶんだよね。特に人を見下ろすとダメみたいで。困ったよねぇ」
高いところが苦手ってことなのだろうか。誰にでも苦手はあるけれど、意識が飛ぶくらいとなると、重度の高所恐怖症だ。
「なら私がハンプティの手を引いてあげる! それならきっと大丈夫だよ!」
ハンプティを越して、階段を登ろうと足を上げた。少しずつ、様子を伺いながら階段を上がっていく。隣で頬をくすぐった草花がボタンくらいに小さく見えるようになった頃、後ろからハンプティからじゃない声がかかる。低くて厳しさを含んだ大人の声。
「貴様っ! ハンプティ様を何処にお連れする気だ!」
「へ?」
私に叫んだのは、ダイヤの兵士。向けられた矛に、体が強ばる。ダイヤの兵士は怖い顔で、ジリジリと私達の距離を縮めて近付いてくる。
「違うんだ! 待って!」
「何を仰いますかハンプティ様。その様な者の城への立ち入りを許可した覚えはありません。その手を離せ、侵入者」
「その旅の中で、私はダイナに会ったの。ダイナは私たちアリスの為に、私が悲しい思いをしないために魔法をかけようとしてくれた。猫が魔法を使えるって不思議な気がするけど……そんな優しいダイナがしようとしたことだから、ダイナなりに私を気遣ってくれたんじゃないかなって分かる。ハンプティと話していたらほっとするし、元気が出たから」
喋っていると、だんだんと何が何だか分からなってきて、最後の方は声が小さくなっていく。脈絡がはっきりとしていないし、上手くまとめられてない。
「ごめんなさい、説明下手くそだよね」
「ううん、解るよ。君の言っていること。嬉しいよ。ありがとう、一生懸命伝えてくれて」
「う、うん! 私こそ、聞いてくれてありがとう!」
私の手に落ちる温もり。ハンプティの手が重なって、私の手は触れるだけの優しい咆哮を受ける。優しく、優しく。触れたら割れてしまいそうに、儚げに触れ合う手。ハンプティは、どこか儚い。
瞬きをすれば消えてしまいそうなほど、ハンプティは儚げに見える。キラキラと太陽の光を受ける金色の髪が、白い肌が、周りの景色がそう見せるのかもしれない。
「よーし、じゃあアリス、このダイヤの城でゆっくりしてきなよ。ゆっくり、疲れをとって元気になって」
「ありがとう、でも私直ぐに行かなくちゃいけないところがあるの。あっ、私チェシャ猫のところに戻らなきゃ!」
不可抗力とはいえ、具合の悪そうなチェシャ猫を置いてきぼりにしてしまっている。なるべく側にいたいのに、ここで休んでしまってそれは叶わない。
「そっか、大変なんだね。チェシャ猫さんの部屋は分かる?」
ハンプティがお尻や背中についた草を落としながら立ち上がる。慌てて立ち上がっていた私も、エプロンドレスについた草を払う。
「部屋は、確か三階だったと思うんだけど、よく覚えてないんだよね。えっと、廊下にトランプ兵の像があったような」
「それなら僕が案内するよ」
「わ、ありがとう!」
ハンプティは私の手をとると、一気に駆け出す。私は躓かないように足取りを合わせた。
金色の髪が、走るリズムにあわせて左右にさらさらと揺れる。足取りは軽やかで、機嫌が良さそうなハンプティ。けれど城の中へ続く階段を前に、ピタリと止まってしまった。
「アリス、先行ってくれる?」
「え? うん。でもどうしたの?」
少し困ったように眉を寄せ、自分でも不思議そうにハンプティは首を傾ける。
「うん、僕、よく階段とか高い所に登ると意識飛ぶんだよね。特に人を見下ろすとダメみたいで。困ったよねぇ」
高いところが苦手ってことなのだろうか。誰にでも苦手はあるけれど、意識が飛ぶくらいとなると、重度の高所恐怖症だ。
「なら私がハンプティの手を引いてあげる! それならきっと大丈夫だよ!」
ハンプティを越して、階段を登ろうと足を上げた。少しずつ、様子を伺いながら階段を上がっていく。隣で頬をくすぐった草花がボタンくらいに小さく見えるようになった頃、後ろからハンプティからじゃない声がかかる。低くて厳しさを含んだ大人の声。
「貴様っ! ハンプティ様を何処にお連れする気だ!」
「へ?」
私に叫んだのは、ダイヤの兵士。向けられた矛に、体が強ばる。ダイヤの兵士は怖い顔で、ジリジリと私達の距離を縮めて近付いてくる。
「違うんだ! 待って!」
「何を仰いますかハンプティ様。その様な者の城への立ち入りを許可した覚えはありません。その手を離せ、侵入者」