桃色のアリス ~暗黒の魔女とアリスの想い~
「仕立て屋は普通、睡眠薬を針に塗ったりしないよ。まぁ、助かったのは事実だし、お礼を言っておこうか」
「そうだね。助けてくれてありがとう」
「礼はいらないぜ! 寄越すなら金、な?」
にっ、と笑って手でお金のマークを作る。
「もう、金の亡者なんだから」
改めて街を見渡すと、街の活気がすっかりなくなっていた。
カラフルな街並みは湿気が増したかのようにどんよりと重く、雨雲がかかった様にくすんで見える。そして、家を華やかに彩る虹色のテープや花の装飾は、古びてしまっていた。
パーティードレスを着た婦人、頭に大きな花を付けた子供、ピエロやライオン、仮装パーティーみたいだったこの街は、閉園を迎えたかと言うように、しんと静まりかえってしまっている。アンハッピーバースデーを祝っていた人々はどこかに消えてしまっていて、取り残されたティーカップやクッキーがぽつんとあるだけだった。空を泳いでいた風船は割れて、レンガの地面に彩りを撒いている。
「これが、崩壊の影響なんだね。一刻も早く何とかしないと」
街の人々は狂気に呑まれつつある。この状況で下に降りれば、またさっきの状態に逆戻りだ。先程の事を考えると、恐ろしさに身体が震えた。それだけは避けたいけれど、だからと言って屋根を歩いていくのも難しい話だ。チェシャ猫や仕立て屋はともかく、運動オンチな私が歩けば落ちてしまいそうだ。城の塀は乗り越えたりつたって歩いたりした事はあるけれど、流石に屋根の上を歩いた経験はない。
「一つ聞いていいかい? 仕立て屋、まさかここを通りかかったから助けたわけじゃないだろう?」
「ご名答! お二人さんを迎えに来てやったんだよ。帽子屋がさ、アリスを迎えに行けってうるせーんだよ。だからオイラがこうして迎えによこされたってわけ。勿論、コレ貰ってな?」
言いながら、今度は幻ではないお金をヒラヒラと見せる。ニヤリと笑い、満足そうだ。
「へへっ。貰えるモノは貰っとかないとな!」
「それで、どうやって帽子屋の館まで行くんだい?」
仕立て屋の話を上手く流し、チェシャ猫が問う。けれど、その答えを聞くことはできなかった。
「アリス! チェシャ!」
何が起こったのか分からなかった。景色が遠くなると、体が落ちていく。慣れてしまいつつある浮遊感が意識を飲み込んでいく。仕立て屋の声が小さくなって消えた。
「そうだね。助けてくれてありがとう」
「礼はいらないぜ! 寄越すなら金、な?」
にっ、と笑って手でお金のマークを作る。
「もう、金の亡者なんだから」
改めて街を見渡すと、街の活気がすっかりなくなっていた。
カラフルな街並みは湿気が増したかのようにどんよりと重く、雨雲がかかった様にくすんで見える。そして、家を華やかに彩る虹色のテープや花の装飾は、古びてしまっていた。
パーティードレスを着た婦人、頭に大きな花を付けた子供、ピエロやライオン、仮装パーティーみたいだったこの街は、閉園を迎えたかと言うように、しんと静まりかえってしまっている。アンハッピーバースデーを祝っていた人々はどこかに消えてしまっていて、取り残されたティーカップやクッキーがぽつんとあるだけだった。空を泳いでいた風船は割れて、レンガの地面に彩りを撒いている。
「これが、崩壊の影響なんだね。一刻も早く何とかしないと」
街の人々は狂気に呑まれつつある。この状況で下に降りれば、またさっきの状態に逆戻りだ。先程の事を考えると、恐ろしさに身体が震えた。それだけは避けたいけれど、だからと言って屋根を歩いていくのも難しい話だ。チェシャ猫や仕立て屋はともかく、運動オンチな私が歩けば落ちてしまいそうだ。城の塀は乗り越えたりつたって歩いたりした事はあるけれど、流石に屋根の上を歩いた経験はない。
「一つ聞いていいかい? 仕立て屋、まさかここを通りかかったから助けたわけじゃないだろう?」
「ご名答! お二人さんを迎えに来てやったんだよ。帽子屋がさ、アリスを迎えに行けってうるせーんだよ。だからオイラがこうして迎えによこされたってわけ。勿論、コレ貰ってな?」
言いながら、今度は幻ではないお金をヒラヒラと見せる。ニヤリと笑い、満足そうだ。
「へへっ。貰えるモノは貰っとかないとな!」
「それで、どうやって帽子屋の館まで行くんだい?」
仕立て屋の話を上手く流し、チェシャ猫が問う。けれど、その答えを聞くことはできなかった。
「アリス! チェシャ!」
何が起こったのか分からなかった。景色が遠くなると、体が落ちていく。慣れてしまいつつある浮遊感が意識を飲み込んでいく。仕立て屋の声が小さくなって消えた。