桃色のアリス ~暗黒の魔女とアリスの想い~
去年、使命があるのだと告げられてからは覚悟していたけれど、いざ目の前に刻限が迫ったら、やっぱり出来る勇気なんてない。失敗して、もしかしたら世界を壊してしまうかもしれない。時計を止められないことだってあるかも。ウサギが来ない事だって。
不安を口に出せば泣いちゃう気がして、話を切り出したものの言葉が続かない。
ウサギが来なかった場合、案内人のチェシャ猫と共にウサギを探すことになる。これまで一度も一人で城から出るなんてことなかったし、リズと顔を会わさない日なんてほとんどなかった。
だめ、泣いちゃいそう。そう思った刹那、バシン! と両頬に衝撃が加わる。
「いふぁふぁふぁふぁ! な、なにしゅるの! リズ」
突然のことに、頬を手で挟まれていて上手く口が動かせない。リズを見ると、困ったような顔をしていた。
「リズ?」
「聞いたわ。アリス、今日がその日なのでしょう?」
リズの言葉に、リズは全て知っているのだと察した。リズは困ったように笑っていて、私の不安はすでにおみ通しだった。
「うん」
肯定の返事をする以外答えようがなくて、思わず視線を落とす。ピンク色のドレスと、城の床。どちらも綺麗に輝いているのに、気分はちっとも輝いてくれない。
「もう! 主役が泣いたりしたらダメよ? ほら、顔を上げて笑って?」
ポンポン、と頭を優しく叩いてくれるリズ。その優しさに涙が溢れそうになったけれど、何とか堪えて顔を上げる。
「傍にいなくても、アリスを応援しているわ。貴女なら出来るって信じている。けれど怖かったら、怖いって言っていいの。勇気をだしましょ。だから、ね? 不安な事もあるだろうけれど、今は笑って? せっかくパーティーだもの。楽しみましょう?」
「うん」
せっかくのパーティーだもん。リズの言う通り、楽しまなくっちゃ。
それに、リズがいるなら勇気を出せる気がした。
「ほら、舞踏の演奏が始まるわ」
演奏者達の方を見ると、ちょうど指揮者が棒を振ったところだった。音楽は舞踊曲へと変わる。ゆっくりとした単調な音楽から、華やかな曲調になると、城内は一層賑やかになった。誰もが手を取り合い、リズムに合わせワルツを踊る。
「アリス、踊りましょう」
「うん!」
リズと踊った後はジャックさんや、子供達と踊ったりしてダンスを楽しんだ。
どこで休憩しようか少し考えて、ベランダに足を踏み入れる。案の定、外の空気がひんやりしていて気持ちいい。夜風は少し冷たくて、火照った体が少しずつ冷めていく。空気も美味しいし、正解だったみたいだ。
白い手すりに手を置き、見慣れた薔薇園に視線を移す。
庭には沢山の薔薇。夜の庭はライトアップされていて、花弁に出来る影が深みを出している。芸術的な絵を見ているみたい。
ベランダの手すりに身体を預け、目を閉じる。
夜風が薔薇の甘い香りを運んでくる。薔薇の香りが、肌に触る空気が、この城で過ごした日々の記憶を引きずり出す。
この香りも風も建物の形も、今私に触れるモノ全部が私の思い出。私の大切なもの。
そして、此処にいる私を育ててくれた女王様。何回も怒られて、いっぱい泣かされたけど、大切だってことは変わらない。
『アリス! あんた、また私の部屋に入ったわね!』
『なんでわかったの!?』
『私のコレクションの位置がずれているのよ! あ、こら、待ちなさい! アリス!』
年齢不詳で口煩くて、とっても我が儘。女王様はお母さんみたいでお姉さんみたいな存在。
リズとも、このお城で何度も遊んだ。
『リズ! 今日は迷宮の庭を探検しようよ!』
不安を口に出せば泣いちゃう気がして、話を切り出したものの言葉が続かない。
ウサギが来なかった場合、案内人のチェシャ猫と共にウサギを探すことになる。これまで一度も一人で城から出るなんてことなかったし、リズと顔を会わさない日なんてほとんどなかった。
だめ、泣いちゃいそう。そう思った刹那、バシン! と両頬に衝撃が加わる。
「いふぁふぁふぁふぁ! な、なにしゅるの! リズ」
突然のことに、頬を手で挟まれていて上手く口が動かせない。リズを見ると、困ったような顔をしていた。
「リズ?」
「聞いたわ。アリス、今日がその日なのでしょう?」
リズの言葉に、リズは全て知っているのだと察した。リズは困ったように笑っていて、私の不安はすでにおみ通しだった。
「うん」
肯定の返事をする以外答えようがなくて、思わず視線を落とす。ピンク色のドレスと、城の床。どちらも綺麗に輝いているのに、気分はちっとも輝いてくれない。
「もう! 主役が泣いたりしたらダメよ? ほら、顔を上げて笑って?」
ポンポン、と頭を優しく叩いてくれるリズ。その優しさに涙が溢れそうになったけれど、何とか堪えて顔を上げる。
「傍にいなくても、アリスを応援しているわ。貴女なら出来るって信じている。けれど怖かったら、怖いって言っていいの。勇気をだしましょ。だから、ね? 不安な事もあるだろうけれど、今は笑って? せっかくパーティーだもの。楽しみましょう?」
「うん」
せっかくのパーティーだもん。リズの言う通り、楽しまなくっちゃ。
それに、リズがいるなら勇気を出せる気がした。
「ほら、舞踏の演奏が始まるわ」
演奏者達の方を見ると、ちょうど指揮者が棒を振ったところだった。音楽は舞踊曲へと変わる。ゆっくりとした単調な音楽から、華やかな曲調になると、城内は一層賑やかになった。誰もが手を取り合い、リズムに合わせワルツを踊る。
「アリス、踊りましょう」
「うん!」
リズと踊った後はジャックさんや、子供達と踊ったりしてダンスを楽しんだ。
どこで休憩しようか少し考えて、ベランダに足を踏み入れる。案の定、外の空気がひんやりしていて気持ちいい。夜風は少し冷たくて、火照った体が少しずつ冷めていく。空気も美味しいし、正解だったみたいだ。
白い手すりに手を置き、見慣れた薔薇園に視線を移す。
庭には沢山の薔薇。夜の庭はライトアップされていて、花弁に出来る影が深みを出している。芸術的な絵を見ているみたい。
ベランダの手すりに身体を預け、目を閉じる。
夜風が薔薇の甘い香りを運んでくる。薔薇の香りが、肌に触る空気が、この城で過ごした日々の記憶を引きずり出す。
この香りも風も建物の形も、今私に触れるモノ全部が私の思い出。私の大切なもの。
そして、此処にいる私を育ててくれた女王様。何回も怒られて、いっぱい泣かされたけど、大切だってことは変わらない。
『アリス! あんた、また私の部屋に入ったわね!』
『なんでわかったの!?』
『私のコレクションの位置がずれているのよ! あ、こら、待ちなさい! アリス!』
年齢不詳で口煩くて、とっても我が儘。女王様はお母さんみたいでお姉さんみたいな存在。
リズとも、このお城で何度も遊んだ。
『リズ! 今日は迷宮の庭を探検しようよ!』