敗戦国の花嫁 ー愛してはいけない人を愛してしまった
プロローグ
「ユリア……よく聞くんだ」
兄ヘレンの声は、これまで聞いたことがないほど重かった。
「これは――お前と私、ふたりだけの約束だ」
ユリアは戸惑いながらも頷いた。
ヘレンは、しばらく言葉を探すように黙り込んだあと、ゆっくりと口を開いた。
「これから先、何があっても……」
その瞳には、覚悟のようなものが宿っていた。
「この約束だけは、忘れるな」
ヘレンはユリアの手を強く握った。
ユリアの胸が、小さく揺れた。
「……はい、お兄様」
ユリアは小さく頷いた。
それが――
兄と交わした、最後の約束だった。