漆黒の花嫁  ーその手をもう一度

1 ユーハイム国の姫

 ユーハイム国は、山のふもとに抱かれた小さな国だった。
 原油に恵まれ、金銭的には困ることはなかったが、その豊かさゆえ、隣国から狙われることも少なくなかった。

 それでも今日まで国を保ってこれたのは、王太子であり、騎士団長でもあるヘレン・シュバルツァーの存在が大きかった。
 ヘレン王子は王太子の身でありながら十四歳で騎士団に入り、十八歳とい若さで団長の座に就いた人物である。
 その圧倒的な強さにより、隣国がユーハイム国へ攻め込むことは次第になくなっていった。
 しかし約三年前、東の地にあるアルジール国がユーハイム国の資源を求め、侵攻を開始した。
 アルジール国は東方でも指折りの大国であり、その力は強大で、近年急速に国土を広げていると噂されていた国であった。
 そのため周辺諸国では、いかにユーハイム国の兵力を持ってしても、アルジール国に勝つことは難しいだろうと見られていた。
 しかし戦争は予想をはるかに上回り、長期戦へともつれ込んだ。
 そして三年後の冬、戦況が一変し、ユーハイム国は敗戦を宣言することとなる。
 その大きな要因は、ヘレン王子が戦争に敗れ、命を落としたことだった。
 王太子を失い、士気を喪失したユーハイム国は敗戦を宣言し、国土の一部と王女を人質として差し出すこととなった。
 終戦が決まったその夜、国王シルクベインは、執務室に王女ユリアを呼び出した。
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