敗戦国の花嫁 ー愛してはいけない人を愛してしまった
「……追加の情報は必要だが、完全に否定できる話でもないな。お前も、そう感じているんだろう?」
目を開けて問いかけると、カリルは小さく頷いた。
「……はい。“戦争に参加していた”と聞いた時点では、眉唾だと思いました。ただ、ルトアへ向かう際のユリア様の様子を思い返すと……」
言葉を濁したカリルに、エルフナルドは深く息を吐き、椅子の背に身を預けた。
「……も、申し訳ございません」
カリルは慌てて頭を下げた。
「いや、構わない。仮に事実だとしても、だ。なぜ王女であるあいつが、戦争に参加する必要があった? 何のために……?」
しばらく沈黙が落ちたあと、エルフナルドは再び口を開いた。
「……あいつを見たと言っているのは、その負傷兵一人だけか?」
「はい、今のところは」
「……そうか」
二人は、またしばし黙り込んだ。
「なあ、カリル。あいつの侍女や薬師が襲われた件と、父上があいつを娶りたがった理由、そして跡継ぎを急いだこと……何か関係があると思うか?」
エルフナルドは目を閉じ、こめかみに指を当てた。
「……現段階では何とも言えません。ただ、ユリア様が何かを隠している可能性は否定できないかと。ただし、それが我々に言いにくいだけの個人的な事情であれば良いのですが……。直接、ユリア様にお聞きするのはいかがでしょうか」
「いや……それは得策じゃない」
即座にエルフナルドは首を振った。
「こちらが疑っていると悟られれば、余計に口を閉ざすだろう」
「……ですよね」
「この前襲われた薬師に話を聞いてくれ。あいつと薬師は、かなり頻繁に会っているはずだ。俺からの命だと伝えれば、無闇に隠し立てもできないだろう。ただし、探っていることは絶対にユリアに知られるな」
「承知しました。早急に手配いたします」
カリルは深く一礼し、執務室を後にした。
扉が閉まると、エルフナルドは顎に手を当て、再び思考に沈んだ。
――あいつが戦争に参加していたという話……おそらく事実だ。
馬にも慣れている。野営にも動じない。負傷者の手当ても異様なほど手際がいい。
だが、それだけで王女を戦場に出す理由になるのか?
――父上だけではない。
あいつ自身も、俺に言えない何かを抱えている……。
考えれば考えるほど、答えは遠ざかる。
それでも、疑わずにはいられない自分自身に、エルフナルドは深くため息をついた。
目を開けて問いかけると、カリルは小さく頷いた。
「……はい。“戦争に参加していた”と聞いた時点では、眉唾だと思いました。ただ、ルトアへ向かう際のユリア様の様子を思い返すと……」
言葉を濁したカリルに、エルフナルドは深く息を吐き、椅子の背に身を預けた。
「……も、申し訳ございません」
カリルは慌てて頭を下げた。
「いや、構わない。仮に事実だとしても、だ。なぜ王女であるあいつが、戦争に参加する必要があった? 何のために……?」
しばらく沈黙が落ちたあと、エルフナルドは再び口を開いた。
「……あいつを見たと言っているのは、その負傷兵一人だけか?」
「はい、今のところは」
「……そうか」
二人は、またしばし黙り込んだ。
「なあ、カリル。あいつの侍女や薬師が襲われた件と、父上があいつを娶りたがった理由、そして跡継ぎを急いだこと……何か関係があると思うか?」
エルフナルドは目を閉じ、こめかみに指を当てた。
「……現段階では何とも言えません。ただ、ユリア様が何かを隠している可能性は否定できないかと。ただし、それが我々に言いにくいだけの個人的な事情であれば良いのですが……。直接、ユリア様にお聞きするのはいかがでしょうか」
「いや……それは得策じゃない」
即座にエルフナルドは首を振った。
「こちらが疑っていると悟られれば、余計に口を閉ざすだろう」
「……ですよね」
「この前襲われた薬師に話を聞いてくれ。あいつと薬師は、かなり頻繁に会っているはずだ。俺からの命だと伝えれば、無闇に隠し立てもできないだろう。ただし、探っていることは絶対にユリアに知られるな」
「承知しました。早急に手配いたします」
カリルは深く一礼し、執務室を後にした。
扉が閉まると、エルフナルドは顎に手を当て、再び思考に沈んだ。
――あいつが戦争に参加していたという話……おそらく事実だ。
馬にも慣れている。野営にも動じない。負傷者の手当ても異様なほど手際がいい。
だが、それだけで王女を戦場に出す理由になるのか?
――父上だけではない。
あいつ自身も、俺に言えない何かを抱えている……。
考えれば考えるほど、答えは遠ざかる。
それでも、疑わずにはいられない自分自身に、エルフナルドは深くため息をついた。