敗戦国の花嫁 ー愛してはいけない人を愛してしまった
「ですが今回、ルトアの晩餐会の席で……キャロル様の方から、エルフナルド様に婚約のお申し出があったそうですの。……それを、陛下はお断りになられたとか」
「……え?」

 思いがけない話に、ユリアは目を見開いた。
 その様子を見て、ミラベルの苛立ちはさらに強まる。

「今、初めて聞いたという顔ですね? 冗談もほどほどにしてちょうだい! 貴方が何か吹き込んだのでしょう? でなければ、キャロル様の求婚を断る理由などありませんわ!」

 声を荒げるミラベルに、ユリアは言葉を失った。

「……私は、何も――」
「ふざけないで!!」

 ミラベルは一歩踏み込み、怒りを露わにする。

「ルトア国の王女からの求婚を断る意味が、お分かり? 両国の関係が崩れる危機なのよ! 国の情勢が変わるの!」

 言葉は止まらない。

「本来はリヒター様が王となり、エルフナルド様は騎士団長として国を支える未来だった。だけどリヒター様が亡くなられて……」

 ミラベルは悔しそうに唇を噛む。

「王位はエルフナルド様に譲られ、前線を退かれた。王が戦に出ることは許されないからよ……。その結果、貴方の国ユーハイムとの戦争は長引いた」

 ユリアの胸に、点と点が繋がっていく。

「最終的には勝利したけれど……戦に強い国として知られていたこの国は、周囲から様々なことを言われるようになったのよ……」

 ユリアは、ようやく理解した。
 戦争が長引いた、その裏にあった事情を。
 自国がすぐに敗れると思い、兄を止めたあの時。
 まさか、そんな背景があったとは――。

「ルトア国との信頼を強めるため、今はとても重要な時期なのです。陛下がそれを分からないはずがないわ」

 ミラベルは、怒りと焦りを滲ませながら言った。

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