敗戦国の花嫁 ー愛してはいけない人を愛してしまった
「だから……陛下がそんな決断をなさるはずがないのよ。貴方、一体何を言ったの?」

 詰め寄られ、ユリアは静かに首を振った。

「私は、本当に何も申し上げておりません……。申し訳ございません」

 ユリアは深く頭を下げた。
 怒りを募らせるミラベルの前で、それ以上言える言葉はなかった。

「謝れば済む問題じゃないのよ? 貴方、周りの女性たちからエルフナルド様を奪っておいて、次はこのアルジール国を危機にさらすおつもり? どれだけ不幸を呼び込めば気がすむの? 貴方はアルジール国のためにも、この国にいるべきではないわ!」
「ミラベル様、もうおやめください!」

 ミラベルのあまりの剣幕に、アリシアが思わず声を上げた。

「侍女の分際で、話に割って入るというの? 身分をわきまえなさい!」

 侍女に口を挟まれたことがよほど気に障ったのか、ミラベルは鋭くアリシアを睨みつけた。

「も、申し訳ありません……」

 アリシアはそう言って、慌てて頭を下げた。

「貴方、王妃なのよ? 侍女くらい、きちんと教育なさったらどうなの? こんな礼儀のなっていない侍女が側についているなんて、この国の恥ですわ」

 ミラベルは顎でアリシアを示し、吐き捨てるように言った。

「アリシアを悪く言うのは、おやめください」

 アリシアのことを侮辱され、ユリアは思わず声を強めた。

「この子は、とても優秀な侍女です」
「……もういいわ。とにかく、自分がどうするべきか、よく考えることね」

 ミラベルはそう言い残すと、踵を返して屋敷を後にした。
 その背中を見送るユリアの胸には、言葉にできない重さだけが、静かに沈んでいった。
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