敗戦国の花嫁 ー愛してはいけない人を愛してしまった
 それから二日後。
 ユリアは、ずっと胸の奥に沈めていた問いを、まだ手放せずにいた。

 ユリアとエルフナルドは並んで紅茶を口にしていた。
 湯気の立つカップを手に、エルフナルドがふとユリアに声をかける。

「先日の茶会は楽しめたか?」

 紅茶を一口飲み、ちらりとユリアへ視線を向ける。

「……はい。お花がお好きな方がいらして……その方と、つい話が弾んでしまいました」

 庭園の話をしていた時のことを思い出しながら、ユリアはそう答えた。

「そうか。話の合う者がいたのなら、何よりだな」

 ユリアの様子に、エルフナルドはわずかに安堵したように頷いた。
 しばらく沈黙が流れた後、ユリアは意を決したように顔を上げる。

「陛下……少し、お伺いしてもよろしいでしょうか」
「なんだ? 私に質問とは、珍しいな」

 エルフナルドはティーカップを置き、ユリアを見た。

「陛下には、お兄様がいらっしゃったと聞きました。クリック様からも少し……。とても勤勉なお方で、薬草も育てていらっしゃったと」
「ああ。兄上は優秀で、王に相応しい人物だった。私は兄を兵力で支えるため、騎士団長になった。……本当は私は、王よりも騎士の方が性に合っている。サリトスにもそう言われた」

 そう言って、エルフナルドは小さく鼻で笑った。

「だが兄上が亡くなり、王になるべきは私になった。それで騎士団を退いた。騎士団は後輩たちに任せるしかなかったが、本当はもっと時間をかけて育てたかった」
「……そう、だったのですね……」

 ユリアは静かに頷き、視線を落とした。

「戦場に出てばかりの私に王が務まるのか、最初は迷った。だが、戦の多いこの国を変えたいという思いもあった。今は……自分がすべきことも、理解しているつもりだ」
「……もう一つ、お聞きしてもよろしいでしょうか」

 少し緊張した様子で、ユリアは言葉を選ぶ。

「ああ。何だ?」
「……ルトア国のキャロル様からの求婚を、お断りになったというのは……本当なのでしょうか」

 俯いたまま、しかしはっきりと問いかける。

「……なぜ、お前がそれを知っている?」

 エルフナルドは眉をひそめた。

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