敗戦国の花嫁 ー愛してはいけない人を愛してしまった
――また雨が強くなってきてしまった……。
今日は、ここで夜を明かして、明日動いた方がいいかもしれないわ。
ユリアはそう判断し、この洞窟で一晩を過ごすことに決めた。
洞窟の中は、思ったよりも奥行きがあった。
慎重に足を進めていくと、一番奥で――何かが動いた。
小さく丸まるように座り込む、人影。
一瞬、死体かと思い、ユリアは思わず足を止めた。
だが、よく見ると、その体はかすかに震えている。
ユリアは恐る恐る近づき、顔を覗き込んだ。
そこにいたのは、十五、六歳くらいの青年だった。
左肩を酷く負傷しており、血で服が濡れている。
意識はほとんどないようだった。
その服装から、ユーハイム国の者ではないとすぐに分かった。
それでもユリアは、せめて応急処置だけでもしようと、青年の服に手を伸ばした。
服をずらして傷口を見ると、想像以上に範囲が広く、傷も深い。
ユリアは自分のズボンの裾を引き裂き、青年の左肩を強く圧迫した。
だが――血は止まる気配を見せなかった。
――このままでは、この人は助からない……。
早く傷を塞がないと……。
でも……。
ユリアは、ヘレンとの約束を思い出し、強く唇を噛みしめた。
こういう場面は、今までも何度もあった。
同じ「人」なのに、ユーハイム国の者かどうかで、助けるか、助けないかを決めなければならない。
そのたびに見てきた、あの絶望した顔を、ユリアは忘れられなかった。
そして今、目の前の青年を見て、胸が痛む。
この歳で戦場に……。
もしかすると、もっと幼い頃から、私のように戦場に立たされていたのかもしれない……。
こんなにも傷つき、血を流さなければならないなんて。
ユリアは、無意識のうちに青年の肩へ手を伸ばしていた。
ユリアは、視線を洞窟の奥へと走らせた。
今日は、ここで夜を明かして、明日動いた方がいいかもしれないわ。
ユリアはそう判断し、この洞窟で一晩を過ごすことに決めた。
洞窟の中は、思ったよりも奥行きがあった。
慎重に足を進めていくと、一番奥で――何かが動いた。
小さく丸まるように座り込む、人影。
一瞬、死体かと思い、ユリアは思わず足を止めた。
だが、よく見ると、その体はかすかに震えている。
ユリアは恐る恐る近づき、顔を覗き込んだ。
そこにいたのは、十五、六歳くらいの青年だった。
左肩を酷く負傷しており、血で服が濡れている。
意識はほとんどないようだった。
その服装から、ユーハイム国の者ではないとすぐに分かった。
それでもユリアは、せめて応急処置だけでもしようと、青年の服に手を伸ばした。
服をずらして傷口を見ると、想像以上に範囲が広く、傷も深い。
ユリアは自分のズボンの裾を引き裂き、青年の左肩を強く圧迫した。
だが――血は止まる気配を見せなかった。
――このままでは、この人は助からない……。
早く傷を塞がないと……。
でも……。
ユリアは、ヘレンとの約束を思い出し、強く唇を噛みしめた。
こういう場面は、今までも何度もあった。
同じ「人」なのに、ユーハイム国の者かどうかで、助けるか、助けないかを決めなければならない。
そのたびに見てきた、あの絶望した顔を、ユリアは忘れられなかった。
そして今、目の前の青年を見て、胸が痛む。
この歳で戦場に……。
もしかすると、もっと幼い頃から、私のように戦場に立たされていたのかもしれない……。
こんなにも傷つき、血を流さなければならないなんて。
ユリアは、無意識のうちに青年の肩へ手を伸ばしていた。
ユリアは、視線を洞窟の奥へと走らせた。