敗戦国の花嫁 ー愛してはいけない人を愛してしまった
53 言えない秘密
――信じて……くれたのかしら。
疑われていないと、いいけれど……。
朝焼けの光が、洞窟の奥まで差し込んでいた。
気付けば雨も上がり、洞窟に残っていたのは湿った空気と、血の匂いだけだった。
洞窟を出ると、ユリアを探していた兵士たちが、すぐ近くまで来ていた。
「ユリア様! ご無事でございましたか。良かった……! お怪我など、ございませんか?」
「ええ。大丈夫よ。この洞窟で一晩、雨をしのげたから」
「そうでしたか……本当に良かったです。ですが……ユリア様と共に土砂崩れに巻き込まれた他の四名は、残念ながら……」
兵士は悔しそうに言葉を濁した。
「……そう」
「それでも、ユリア様がご無事で何よりです。お疲れでしょうが、先へ進みましょう」
それからユリアは、残った兵士たちと共に戦場へ向かい、負傷者の治療にあたった。
その治療の最中も、ユリアの脳裏にはあの洞窟で出会った青年の姿が何度も浮かんでいた。
――あの人は、どこの国の人だったのだろう……。
命を助けることはできたけれど、傷痕を残してしまった……。
あの時は、ただ助けたい一心だったけれど……本当に、それで良かったのかしら……。
青白く残ったあの傷痕を、あの人はどう思っているのだろう……。
自分の判断で治療してしまったこと。
消えることのない傷痕を残してしまったこと。
そして、あの青年が自分を疑っていなかったかという不安。
ユリアの胸には、ユーハイム国へ帰還してからも、しばらくそれらが重くのしかかっていた。
だがその後、あの青年と再び会うことはなかった。
自分の力に関する噂が広がることもなかった。
そのためユリアは次第に、あの洞窟での出来事は、極限状態で見た夢だったのではないかとさえ思うようになっていた。
疑われていないと、いいけれど……。
朝焼けの光が、洞窟の奥まで差し込んでいた。
気付けば雨も上がり、洞窟に残っていたのは湿った空気と、血の匂いだけだった。
洞窟を出ると、ユリアを探していた兵士たちが、すぐ近くまで来ていた。
「ユリア様! ご無事でございましたか。良かった……! お怪我など、ございませんか?」
「ええ。大丈夫よ。この洞窟で一晩、雨をしのげたから」
「そうでしたか……本当に良かったです。ですが……ユリア様と共に土砂崩れに巻き込まれた他の四名は、残念ながら……」
兵士は悔しそうに言葉を濁した。
「……そう」
「それでも、ユリア様がご無事で何よりです。お疲れでしょうが、先へ進みましょう」
それからユリアは、残った兵士たちと共に戦場へ向かい、負傷者の治療にあたった。
その治療の最中も、ユリアの脳裏にはあの洞窟で出会った青年の姿が何度も浮かんでいた。
――あの人は、どこの国の人だったのだろう……。
命を助けることはできたけれど、傷痕を残してしまった……。
あの時は、ただ助けたい一心だったけれど……本当に、それで良かったのかしら……。
青白く残ったあの傷痕を、あの人はどう思っているのだろう……。
自分の判断で治療してしまったこと。
消えることのない傷痕を残してしまったこと。
そして、あの青年が自分を疑っていなかったかという不安。
ユリアの胸には、ユーハイム国へ帰還してからも、しばらくそれらが重くのしかかっていた。
だがその後、あの青年と再び会うことはなかった。
自分の力に関する噂が広がることもなかった。
そのためユリアは次第に、あの洞窟での出来事は、極限状態で見た夢だったのではないかとさえ思うようになっていた。