敗戦国の花嫁 ー愛してはいけない人を愛してしまった
「慣れないことで疲れただろう。今日はゆっくり休め」
「……ありがとうございます」

 短いやり取りの後、エルフナルドは自室へ戻っていった。
 ユリアも部屋に入り、長椅子に腰を下ろす。
 しばらくしてノックの音がし、アリシアが顔を覗かせた。

「ユリア様。お食事とお風呂のご準備が整っておりますが、いかがなさいますか?」
「ありがとう、アリシア。せっかくだけど、お風呂だけにするわ。少し疲れてしまって」

 そう答えると、アリシアは心配そうにユリアの顔を覗き込んだ。

「……お顔の色が良くありません。具合は悪くないですか?」
「大丈夫よ。少し疲れただけ。眠れば良くなるわ」

 アリシアはなお言いたげだったが、「かしこまりました」とだけ言って部屋を後にした。
 ユリアは湯を使うと、そのままベッドに横になり、すぐに眠りに落ちた。
 その夜、扉の前で足を止める気配が、何度かあった。
 けれどユリアは、それに気付くことなく眠り続けていた。
 
 翌朝、ユリアは早くから薬事室を訪れ、クリックの到着を待っていた。
 ほどなく扉が開き、クリックが入ってきた。

「おはようございます、ユリア様。体調はいかがですか?」
「昨日はよく眠れましたから。もうすっかり平気です」

 ユリアはそう言って、冗談めかして腕に力を入れてみせた。

「それは良かった」

 微笑むクリックをしばらく見つめた後、ユリアは小さく息を吐いた。

「あの……クリック様。昨日のことなのですが……」

 言葉が途切れる。
 クリックは急かすことなく、静かにユリアを見守っていた。

「……私には、人の傷を癒す力があります。ただ、事情があって、もう力は使わないと決めていました。五年ほど、一度も使わずに過ごしてきました」

 ユリアは視線を落とし、俯いたまま続ける。

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