敗戦国の花嫁 ー愛してはいけない人を愛してしまった
「一週間後にルトアへ長期で赴く予定だ。移動も含めて一ヶ月ほどになる」

 エルフナルドは淡々と続ける。

「お前は置いていくつもりだったが、一緒に来るといい。今後の貿易に関わる重要な訪問だ。その名目で、貿易随行のため帰国は叶わぬと、私からユーハイム国王へ書状を送る」
「そんな……! 陛下に嘘をついていただくわけには……」
「構わない」

 言い切るように、エルフナルドは遮った。

「では、どういう理由をつける?」
「それは……」

 言葉に詰まり、ユリアは黙り込んだ。

「気にするな。明日、私が書いて送っておく」

 ユリアは何か言おうとして唇をわずかに開き、けれど言葉にならずに視線を落とした。
 エルフナルドはその様子を一瞬だけ見て、何も言わずにカップを置いた。

「もうお前も休め」
 
 エルフナルドは長椅子から立ち上がると、そのままベッドへ向かった。
 これ以上踏み込ませないように話を締めくくったのだと、ユリアには分かった。
 それ以上何も言えず、ユリアはその背を見送るしかなかった。

 
 それから一週間後、ユリアはエルフナルドと共に、ルトア国へ向けて馬車で出発した。
 出発して二日目の朝、馬車の外からカリルの声が響いた。

「陛下。急ぎお伝えしたいことがあると、使いが来ております」
「……わかった。馬車を止めろ」

 エルフナルドはそう指示すると、馬車の窓を開け、用件を促した。

「……実は、警備を強化している西の町で紛争が起きまして……」
「西にはサリトスがいるだろう? あいつがいれば問題ないはずだが」

 エルフナルドは眉をひそめて言った。

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