敗戦国の花嫁 ー愛してはいけない人を愛してしまった
「だ、大丈夫ですか?!」
「無駄です」
フードの男は冷ややかに言った。
「あなたが治せないよう、確実に息の根を止めました」
ユリアは震える手で首元に触れた。
脈は――もうなかった。
唇を強く噛みしめる。
「……どうして……」
「約束を破った。それだけです」
フードの男はそう言うと、強引にユリアの腕を掴み立たせ、再び馬車へと押し込んだ。
「抵抗しない方が身のためですよ」
馬車は、何事もなかったかのように再び動き出した。
「あなたは一体誰なんですか……。私をどこへ連れて行くのですか……」
向かいに座るフードの男に問いかける。
「……直に分かります」
一拍置いて、男は続けた。
「あなたの“よく知る場所”へ、お返しするだけですから」
それ以上、男が口を開くことはなかった。
やがて馬車は止まり、ユリアは降ろされた。
足元の石畳に見覚えがあった。
規則正しい敷き方、縁に刻まれた古い紋様――
かつて何度も踏みしめたものと、よく似ている。
――そんなはず、ない……。
周囲は裏門らしく人気がなく、灯りも少ない。
それでも胸の奥がざわつき、嫌な予感が膨らんでいく。
建物の中を通され、奥の部屋の扉の前でフードの男が立ち止まる。
「――陛下、失礼いたします」
――陛下……?
まさか、この建物は……やはり……
嫌な予感を抱えたまま、ユリアは部屋へ足を踏み入れた。
奥の椅子に腰掛ける人影が、ゆっくりとこちらを向く。
その顔を認めた瞬間、ユリアの足が止まった。
「……お父様……」
そこにいたのは、ユーハイム国王――
ユリアの父、シルクベイン王だった。
「無駄です」
フードの男は冷ややかに言った。
「あなたが治せないよう、確実に息の根を止めました」
ユリアは震える手で首元に触れた。
脈は――もうなかった。
唇を強く噛みしめる。
「……どうして……」
「約束を破った。それだけです」
フードの男はそう言うと、強引にユリアの腕を掴み立たせ、再び馬車へと押し込んだ。
「抵抗しない方が身のためですよ」
馬車は、何事もなかったかのように再び動き出した。
「あなたは一体誰なんですか……。私をどこへ連れて行くのですか……」
向かいに座るフードの男に問いかける。
「……直に分かります」
一拍置いて、男は続けた。
「あなたの“よく知る場所”へ、お返しするだけですから」
それ以上、男が口を開くことはなかった。
やがて馬車は止まり、ユリアは降ろされた。
足元の石畳に見覚えがあった。
規則正しい敷き方、縁に刻まれた古い紋様――
かつて何度も踏みしめたものと、よく似ている。
――そんなはず、ない……。
周囲は裏門らしく人気がなく、灯りも少ない。
それでも胸の奥がざわつき、嫌な予感が膨らんでいく。
建物の中を通され、奥の部屋の扉の前でフードの男が立ち止まる。
「――陛下、失礼いたします」
――陛下……?
まさか、この建物は……やはり……
嫌な予感を抱えたまま、ユリアは部屋へ足を踏み入れた。
奥の椅子に腰掛ける人影が、ゆっくりとこちらを向く。
その顔を認めた瞬間、ユリアの足が止まった。
「……お父様……」
そこにいたのは、ユーハイム国王――
ユリアの父、シルクベイン王だった。