敗戦国の花嫁 ー愛してはいけない人を愛してしまった

62 父の目に映る価値

 久々の再会にもかかわらず、その瞳に宿るのは情ではなく、冷ややかな光だけだった。
 
「な、何故……」

 ユリアの額から、大粒の汗が伝い落ちた。

「何故だと?」

 シルクベイン王は眉一つ動かさず、淡々と答えた。

「私はお前に手紙を送ったはずだ。だが、お前は断った。……だから別の者を使い、国へ連れ戻した。それだけのことだ」
「……私は、すでに敵国に嫁いだ身です。普通、自国へ戻ることなど――」

 ユリアは言葉を切り、深く頭を下げた。

「なかなか許されることではありません……」

 しばしの沈黙の後、ユリアは恐る恐る視線を上げた。

「た、体調は……もう、よろしいのですか……?」
「ふっ……」

 シルクベイン王は小さく鼻で笑った。

「私の体調など、気にもしていないくせに。まあ、それはよい」

 声の調子が、わずかに変わる。

「……私は、お前にどうしても確認したいことがある。こうして強引にでも連れ戻した理由が、分からぬほど愚かではあるまい」

 語尾に込められた圧に、ユリアは思わず一歩後ずさった。

「…………」
「黙っていれば、やり過ごせるとでも思ったか?」

< 148 / 171 >

この作品をシェア

pagetop