敗戦国の花嫁 ー愛してはいけない人を愛してしまった
 シルクベイン王は突然立ち上がり、ユリアの胸ぐらを掴んだ。

「そうはさせん!!」
「お、お父様……おやめ下さい……! 何故――」

 体が宙に浮くほどの力で引き上げられ、ユリアは息を詰まらせた。

「お前は、長年私を騙していたのだぞ!!」

 怒気を孕んだ声が、耳元で響く。
 次の瞬間、ユリアの体は床へと叩きつけられた。

「お前は十三の時に力を失ったはずだ。だからアルジール国に嫁がせた。力を失ったお前に残された使い道は、それくらいしかなかったからだ」

 シルクベイン王は、吐き捨てるように続ける。

「それがどうだ。最近になって、重傷を一瞬で治す者がいると噂を聞いた。最初は、お前だとは思わなかった。……だが、それがアルジール国で起きた出来事だと知ってな」

 小さく、歪んだ笑みを浮かべる。

「怒りで体調を崩すほどだった」
「……」
「お前が本当に力を失っていないなら、手放すことはなかった」
 
 その声が、低く冷たくなる。

「お前がまだこの国にいた頃、力について探る者が現れた。力があるか否かに関わらず、この国の秘密を嗅ぎ回る者は危険だ。……だから暗殺した」

 ユリアの目が見開かれる。

「その人物が、アルジール国の王子だったとはな」
「そ、そんな……」

 ユリアの喉が震えた。

「では……お父様が……エルフナルド様のお兄様を……」

 ユリアの目から、涙が溢れ落ちた。

「その結果、戦争が起きた。……そして、この国は敗れた」

 シルクベイン王は、倒れたユリアの頭を床に押し付ける。

「すべてはお前が招いた戦だ。お前のせいで、この国は負けたのだ!」

 今度は髪を掴み、無理やり顔を上げさせた。

「何故だ! 何故、私を騙した!!」

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