敗戦国の花嫁 ー愛してはいけない人を愛してしまった
「やめろ!」

 周囲の護衛達が、すぐさまユリアを引き剥がした。

「離して!! お願い……まだ助かるの! 私が治せば――!」

 必死にもがくが、力では到底敵わない。
 ユリアはそのまま、ズルズルと奥の部屋へ引きずられていった。
 ベッドへ乱暴に投げ出され、両腕を強く拘束される。
 それでもユリアは、自由な足をばたつかせ、必死に抵抗した。

 ――その時。

 強い衝撃が頬を打ち、視界が横に流れた。
 何が起きたのか分からない。
 だが次の瞬間、焼けるような痛みが走り、
 ――打たれたのだと、はっきり理解した。
 
「お前達は、もう下がってよい。明日の朝まで、この部屋に近付くな」

 シルクベイン王の命令に、護衛達は無言で頭を下げ、部屋を後にした。
 扉が閉まり、重い音だけが室内に残る。

 ――静寂。

 部屋には、ユリアとシルクベイン王だけが取り残された。
 体が動かないのではない。
 動かそうとしても、言うことをきかなかった。
 頬の痛みだけが、やけに鮮明だった。
 これから父にされることを理解した瞬間、指先から力が抜け落ちる。 
 頬を伝って、涙が静かに落ちた。
 
 ――もう……駄目だわ……。
 陛下……。
 あの人がここにいるはずがないと、分かっているのに。
 
 ユリアは、ゆっくりと目を閉じた。


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